電波女と青春男 五章『サンクスギビングの憂鬱』

エリオが本格的に地球人になろうとしたお話。
今回は女々さんのテンションが異常(笑)で楽しい描写から始まり、さらにエリオも社会復帰すべく「働きたい」と喋ったりと、これまでになく前向きな雰囲気が漂っておりましたが…。
なんという現実描写!
それでなくとも高校中退で未成年なのに、布団蒔いたまま街を徘徊している子を雇ってくれる処なんて、創作物の中にしかありませんよねぇ。…創作物なのにっ!(笑)
ここでエリオの心が再び傷ついた描写が延々と続いても不思議はないのですが、その一歩手前で踏みとどまっていたのは感謝。…「そちら」は本作の「テイスト」(@デント)と違うような気が致しますからね。
まあ表面上はこれまでと違いエリオのそばには「いとこ」が居てくれて、いつもエリオを見ていてくれるという安心感が必要以上に落ち込ませなかったと解釈できましたが、それにしてもこうしたエピソードを「ポンッ」と入れて来るから油断できませんねぇ、思わず泣きそうになっちゃいましたよ(笑)
油断と言えば、三章あたりから本作は「エリオの現実逃避が自分は宇宙人だと言わせ、本当は一旦現実から逃げた女の子の社会復帰と、それを見守る真くんとヘンな女の子たちの青春物語なんだ」と考えておりましたが、今回エリオの就職先の婆ちゃんは変な事を口走りますし、空き地でロケットを打ち上げている謎の人物が登場(まだ登場はしてないか…)しましたし、「宇宙人話」はまだ終わっていないようでございます。
どこまでも「安定」させないようでございまして、こちらは現実と非現実の間を行ったり来たりさせられながら、作者の罠にはまって行く外はないようです。