シャングリ・ラ 第十三話『飛行少女』

 國子突撃す。動き出した物語は結構楽しいので困ります。いや、困ることはないのですが。
 「仕込み」は面倒だし地味です。ですが「仕込み」を手抜きしてしまいますと完成品の料理は「今ひとつ」の味にしかなりません。腕の良い料理人は仕込みに時間と手間を掛けるものでございます。そして客はその苦労を知ることはなく(必要はありません)完成品の「料理」だけで美味い不味いを判断すれば良いと考えております。
 といった事から導かれる答えとして「お話は完結してから判断すべき」というものがございます。が、テレビアニメである以上各話毎にも見せ場が必要でしょうし、それは「仕込み」の最中であろうとも同様、いえ、むしろ「仕込み」の段階だからこそ視聴者を飽きさせない配慮が必要なのではないでしょうか。
 前半戦を総括いたしますと、原作の設定に振り回されて作品の楽しさがあまり伝わってこなかったかなぁ? といったところでしょうか。そのくせ「描いておかなければならなかった事」が抜け落ちていたようにも感じられました。
 今回國子がアトラスへの侵入を試みる場面で、魅力的な空中戦が描かれておりました。ここはこれまでの鬱憤を晴らすかのような見事なアクションシーンで楽しく拝見したのですが、一方で「ありえねー」という心の叫びも聞こえた(笑)シーンでございました。
 ここが「描いておかなければならなかった事」でございまして、例えばこれまでで國子の超人的な能力を繰り返し描写していたのでしたら、ここでの國子の働きにも納得したと思います。
 おっさん世代でしたら「未来少年コナン」でコナンが超人的な能力を発揮したシーンを覚えていると思いますが、あれも「そういうものだ」という暗黙の了解ができるよう繰り返しその手の描き方をしてきたから有効な描写で、今回のように「絵的な見せ場」を優先し(それはそれで納得いたしましたが)唐突に超人的な能力を見せられても説得力に欠けているように思えてしまいました。
 と、不満を書きましたが今までの退屈な「仕込み」も終わったようで、今回のように國子たちが大活躍していただけるのでしたら、今後は期待大でございます。