蟲師 第25話『眼福眼禍』

 現象的には「何でも見通せる眼」を持ったことによる災いの顛末を描いておりましたが、根本は「幸せの形態」についての作者の考察なのかもしれません。いや、「心の平穏の在り処」でしょうか。
 生まれ付いての盲目の少女・周(あまね)が蟲の力で「世界」を「発見」する描写は感動的で、しかしその力はやがて彼女の重荷になってしまいます。彼女の得た眼は最初は遠くのものが見えるようになり、次に遮蔽物を透過し、ついには未来をも見せるようになる。
 作品ではここまでしか描かれておりませんでしたが、本当は「人の心の中」まで見えるようになったのでは? と思いました。物や未来が見えることが負担なのではなく、人の醜さが見えてしまうことが耐えられなくなったのでは、と。
 やがて蟲は彼女の体から離れ、同時に視力も失ってしまいます。見えないことが幸せだとは思いませんが、見えすぎることも決して幸せではないというお話。「過ぎたるはなお及ばざるが如し」というありがたい教えを思い出しました。
 周が明るく去って行くラストシーンに救いがあり、いいお話に仕上がっておりました。名塚さんの歌も聴けたし(笑)