獣の奏者エリン 第23話『ガザルムの誓い』

「心配するな。お、俺がお前を守ってやるから!」
 トムラ先輩、肝心なところで噛んじゃダメ(笑) といった微笑ましいエピソードをはさみつつ、結構重たい内容のお話を私の壊れかけた頭でも理解できるよう噛み砕いて説明して頂いたことに感謝しております。
 権力、いえ「国」を維持するとき必要なものは「暴力装置」と「神格化」ではないかと常々考えております。リョザ神王国には闘蛇をもって国を守る大公という「暴力装置」がございますが、一方でその闘蛇を喰らう唯一の存在である「王獣」を従えることのできる「神王」が、実際は力を持っている大公を支配しているのだという考え方、「王祖ジェ」の行った伝説を維持することが「神格化」であり、国の維持のために必要な「お伽話」であります。
 しかし今回エリンの行った行為は神王の「カリスマ」を脅かす行為であり、それは結果的に国の維持という点では排除しなければならない要素である・・・残酷ではありますがこれが現実というものでしょう。上橋さんの別作品「精霊の守り人」にも同じお話がありましたが、多分作者はそういうシステムが嫌いなのでしょう。
 そういう面倒なお話をしながらも、今回の「キモ」はそういったところではなく(もっともこのお話は今後の展開に重要な意味を持つのでしょが)「エリンを包む善意・友情・愛情」なのでしょう。これは同情から来ているのではなく、エリンの日常の行動から導かれた帰結なのだという作者の愛が感じられたエピソードでした。この回単体で観たとしたら「あざとい」と感じたかもしれませんでしたが、23回の積み重ねがそれを感じさせません。
 派手な戦闘シーンもあまりなく、凝ったアングルや「ヌルヌル」動く作画もございません(ただしこのスタッフが「出来ない子」という意味ではありません。作品コンセプトがそうしたものを抑えているのでしょう)が、アニメ作品はそれだけではない、それだけでは評価できないということを見せてくれたエピソードでございました。