蟲師 第21話『綿胞子』

 怖い話なのですが、ただ恐ろしいのではなく哀しさが同居した哀しさとでも申しましょうか。小泉八雲の「怪談」を読んだ時のような後味を思い起こさせるようなお話でした。
 「ヤスケ」と「あき」夫婦の間に生まれた子供は人でも獣でもない得体の知れない緑色の塊「綿吐(わたはき)」という蟲だった、というところから始まるお話。この綿吐は女性の体内に侵入して胎児に寄生して成長する蟲で、産み月になると体外に出て今度は栄養を摂取するために「端末」として人の子供の姿の人茸(ひとたけ)という蟲を送り込みます。
 子供を喪った悲しみに呉れていた「あき」は人外のものとは知りながらもその子を育てるのですが、綿吐は何人もも人茸を送り込んでくる。そして数年が絶つと人茸は本体に栄養を送る役目を終えて、新しい胞子を蒔き散らして死んで行くというのが大筋。
 「子を喪う」母親の気持ち、人外であっても育て慈しむ母親の愛、けれどもやはり一緒に時を過ごすことの出来ない哀しさ。そういったものが画面から滲み出たエピソードでございました。境界の曖昧な世界に暮す「蟲と人」ではございますから、時としてお互いの領域に入り込んだりするけれど「共生は叶わない」という冷徹な事実を前に非情な決断を下すギンコでしたが、それでも僅かな救いを用意してくれている所がこの作品の素敵なところでございます。
 人茸役の斎藤彩夏さんが反則的に可愛い演技をしておりました(笑)