獣の奏者エリン 第20話『リランという名の王獣』

 エリン王獣のウンチを調べるの巻。物言わぬ動物の体調を観察するにはこの方法が一番普通だと思いますが、喜々としてウンチ投げはしないよなぁ(笑) でも何故か子供はそういうものが好きだったりいたしますので、こういう描写はとっても自然(?)で楽しそうな雰囲気が表現できていたように見えました。
 その楽しそうな描写の陰で、王獣の恐ろしさを描写しております。闘蛇が「ライオン」や「トラ」レベルの生き物だと仮定いたしますと、王獣は・・・。野生の動物は人の扱える代物ではないのだということを「きちん」と描く事で、エリンの今後の困難さを視聴者に想像させるさり気なくも的確な脚本でございました。まあ本作の場合はそれが「当たり前」なのですけれども。
 光という意味の名を持つ王獣リラン。ナレーションによりますと「その後のエリンの生涯を大きく変える」そうですが、それとは別に王獣が「獣」として描かれていることが興味深いです。ありきたりなファンタジーであればこの獣が喋りだしたとしても驚きはいたしませんし、人と獣と自然を超越した存在だった、という「オチ」でも問題はございません。
 「いや、そもそもこの存在がファンタジーだろ?」という野暮は抜きにいたしまして、この「人と交流できない」存在としての王獣は、理不尽の象徴ともいえるかと存じます。人知の及ばぬ、とでも申しましょうか。
 普通こうした役割は「自然」が果たすのですが、それでは人と距離がありすぎます。トラくらいの猛獣であれば人は駆逐してしまうことでしょう。人が容易に駆逐できない大きさで、それでいてどこか神秘さを感じさせる存在の「王獣」。本作は上橋さんがこの生き物を創造した時点で「勝利」したように思いました。
 どのような結末が用意されているのか私には分かりかねますが(そしてそれは「原作」とも違う結末のような気がいたします)、当座は人と、人の意のままにならないあらゆる物の象徴としての王獣リランとの交流を通してエリンが何を見つけ、何を悟るのかが焦点になりそうでございます。