蟲師 第13話『一夜橋』

 駆け落ちをしようと村の境界の橋を渡ろうとした「ゼン」と「ハナ」だったが、ハナは足を滑らせて谷底へ落ちてしまう。そして人ではない者になって戻ってきた…というお話でした。
 一見して偽蔓(ニセカズラかな?)という蟲に体を乗っ取られたハナが憐れだと考えたのですが、本来ハナは3年前谷底に落ちた時に死んでいたわけですから蟲に罪はございません。ニセカズラは光を求める移動手段として「死体」を利用しているだけなのです。
 いつもそうですが、本作は蟲という存在を介して人間の愚かさや醜さ、そして素晴らしさに光を当ててくれる作品でございます。今回は人の負の部分、古い因習や村の都合がハナを苦しめ結果的に殺してしまったという救いのないお話でございます。
 すでにハナではない「何か」になっているものまで利用しようとしていた母親はその象徴として描かれておりました。毎回なんとかして事の解決を図るギンコが「なにもしない」ことを選んだのも、そうした人の身勝手さに怒りを覚えたからなのでしょう。
 結局ゼンはハナとの思い出に殉じ、ハナと同じ「谷戻り」として村に帰り、やがてはハナと同じくニセカズラとなって大きな群れの中でひとつになるのかもしれません。…多分これは違う解釈だと思いますが、しかしこれくらいポジティブ(笑) に考えませんとやり切れないエピソードでした。
 結局人を殺すのは人の闇なんだよなぁ…、ということを嫌というほど思い知らさせてくれたエピソードでございました。