蟲師 第8話『海境より』

 何事もなければ年老いた後で笑い話になったであろう「犬も食わない」夫婦喧嘩が、蟲と出会った事で一変してしまったというエピソード。勢いに任せて言い放った言葉が妻「みちひ」の心に突き刺さり、帰る道さえ見失わせてしまった事を「シロウ」は悟っていたのでしょう、流れ着いた浜で後悔と共に帰るあてもない妻を待ち続けます。確かに責任の一端はシロウにあるのですが、それ以上に男の未練がよく出ていたお話でした(笑) 多分立場が逆だったら全然別のお話になっていたことでしょう。
 「みちひ」の方が浜に流れ着いていたとしたら、シロウを待っていたかどうか(笑) ですし、責任を感じたかも怪しいです。とっとと別の場所、もしくは実家に帰ってしまったか、それが面倒くさい場合あの浜で独身の漁師とくっついて2年半後には乳飲み子を抱えたおかみさんになっていそう。女性はたくましいですからね。
 しかし男は未練を抱えて生きて行きます、「ナミ」という別の女性と暮らしながらも。この辺の心情を考えると男を主役に持ってきているのは凄いなぁと感心。作者の「漆原友紀」さんは確か女性だったはずで、その辺の男の情けなさを熟知しているようでございます(笑)
 お話自体はそんなお話ではなく、喪ったものに想いを馳せながらそれでも今日を生きていかなければならない人の哀しみを淡々と描いた作品だったのですが、どうしてもソチラに目が行ってしまうのは私も未練だらけの男だからかもしれません。はぁ…。