巌窟王 第二十一幕『貴公子の正体』

 ダングラールとヴィルフォールの仕置き完了。・・・そういう作品ではございませんでした(笑) ダングラールへの復讐は原作の方が好みなのですが、この時代設定であの復讐方法*1は説得力を持たないようですから、この「大好きな金に囲まれてはいるが、食べ物もパイロットもいない状態で宇宙を彷徨わされる」という復讐方法も残酷でよろしいですね。
 ただ、原作を読んだ時この辺りの件では胸がすく感じだったのですが、本作の場合それはございませんでした。原因はアルベールの視点から物語を構築したことに因るものであることは明白でございます。
 伯爵が当事者として描かれるのではなくなったおかげで、彼の復讐心よりも「哀しみ」の方にウエイトがかかり、視聴者の私には復讐の成功でも伯爵の心が救えていないことが分かるからでしょう。大変私好みの作品に仕上がっております(笑)
 こんなの巌窟王じゃないという声も聞こえるようですが、翻案としての巌窟王として見ますとこれは立派な作品だと思います。

*1:伯爵は山賊にダングラールを捕らえさせ、牢の中のダングラールに食料を得るためには法外な金額を支払わせることにします。飢えに勝てなくなった彼は全財産を使い果たすまで食料を買い続けてしまいます。そこで伯爵は登場して自分の正体を明かし、心労で変わり果て財産も無くなり哀れな老人になったダングラールを開放して復讐の終わりとしたのでした。