巌窟王 第十九幕『たとえ、僕が僕でなくなったとしても』

 前回の心の傷から立ち直れないアルベールのお話。喜々として伯爵をパリに迎えた自分の愚かさを思い知らされるシーンは、一週間前を軽々と思い起こさせてくれる素晴らしさでございました。そして自暴自棄になりそうな彼を救ってくれたのも、友人のルノーであるところにアルベールの救いがあるというものでございます。
 伯爵には誰もいなかった、でもアルベールにはまだ沢山の友人がいる。この違いが本作の全てだと書いても宜しいかと思いました。それにしても前回の流れからもう少し伯爵は動揺しているかと思いましたが、淡々と最後の復讐に向かっておりましたが、ここは静かでしたが恐ろしい雰囲気がにじみ出ていた場面でございました。相変わらず上手いものです。
 ところで先ほど『NHKスペシャル 日本とアメリカ 第2回「日本アニメvsハリウッド」』を観まして、手塚プロと並んでGONZOも紹介されていたのですが、一抹の危うさを感じずにはいられませんでした。手塚プロの場合「アトム」を貸して著作権料(原作料?)を貰う立場ですから、直接投資分はないのでしょうが、GONZOは制作費持ち出しみたいでしたから、海千山千のハリウッド相手に丸裸にされないかと心配でなりませんでした。
 確かに今のGONZOは外に打って出る以外生き残る道はなさそうですが(ストライクウィッチーズは好セールスだったようですが、あれでGONZOがどれほど儲かったかは不明)、声優に有名俳優使って売り上げ2割り増し(見込み)、その代わり作画やり直しってそれでペイできるのか! 騙されてるよ石川さんと思ったことは内緒です。
 まあ、クリエーターは会社がなくなっても腕さえあれば生き残れるのでしょうが、会社はこのご時世だとどちらに舵を切っても大変な事に違いはないでしょうね。巷間言われるほどGONZOの作品が酷いとは思っていない人間からすると、なんとか生き残っていただきたいと切に願う次第でございます。てなことを本作を観ながら考えてしまった切ない夜でございます。