巌窟王『母の秘密』

 「真綿で首を絞められる」がごとく、ゆっくりとしかし確実にこれから訪れる「破滅」の音が伝わってくるエピソードでございました。アルベールの心の中に生まれた小さな疑惑の念を「これでもかっ!」というくらい増幅してまわるペッポの小悪魔ぶりに恐怖をおぼえたり、美味しそうなブイアベースにお腹が鳴ったりと忙しいエピソードでした(笑)
 今回も派手な「動き」は少なかったのですが、相変わらず細かいところの「動き」は手を抜かない堅実な仕事振りで感心しましたが、同社の噂を聞いた後ですと「抜けるところは抜いておいた方が良かったのでは」と考えずにはいられませんでした。もっともソレをしてしまったらGONZOらしさとが失われてしまうのでしょうし、かといって視聴者が望む以上の水準でアニメを作って赤字を出し結果的にGONZOの新作が観られなくなってしまえば、それはそれでファンへの背信行為のような気もしますし、・・・難しい問題でございます。ファンも制作会社も幸せになれるような新しい仕組みが出来ると良いのですが。
 さて今回は伯爵が「破滅するのは我らではない」と仰っておりましたが、確かに破滅するのは伯爵の復讐の対象者たちなのでしょうが、これは伯爵自身が既に破滅しているから言える台詞なのでしょう。原作の簡易版しか読んでいない(しかも大昔!)私にはなにも語れませんが、復讐劇という非生産性の極みのような物語に何故人はこうも惹かれるのでしょうか。・・・という問いを自分にしながら次回を待つ事にいたします。