巌窟王『5/22、嵐』

 お話としてはたいした進展はありませんでしたが、アルベールの友人たちが登場、そして「運命の相手」と伯爵が対峙したところで次回へ。復讐ものは大好きと何回も書いた気もしますが、それは「過去の清算」という非常に後ろ向きで非生産的行為でございます。そのなんとも言えない破滅への雰囲気が画面のそこかしこに緊張感として溢れておりまして目が離せません。
 絵としては視覚の動線処理と申しましょうか、画面の切り替わりが実に滑らかで心地よいです。なにとは申しませんが、最近観たアニメ(ここで感想を書いているアニメではありません)の幾つかには、こうした処理が上手く行ってなくて非常に観にくい作品がございまして、そうしたものと比べると雲泥の差でございます。
 カット割りを多様するとスピード感が増す効果はあると思うのですが、穿った見方をいたしますと「きちんとした演技を描けるアニメーター」が不足しているからの窮余の一策ではないのでしょうか?なまじ固定カメラで長まわしなんてことをいたしますと、「粗」が目立ってしまいますから仕方のないことなのかもしれませんが。
 少し前になりますが、BSで再放送されていました「アルプスの少女ハイジ」を視聴していましたら、ハイジとクララが同一フレーム内で長々と演技していたシーンがありました。あんな昔のアニメでもこれくらいやっていたのだと感激しましたが、あのスタッフだから出来たのか、それとも今のアニメーターの平均的レベルが落ちたのか考えさせられるシーンでございました。もっとも今はそうしたものに需要がないのかもしれませんが。
 本作は画面からはとにかく落ち着いた印象を受けまして、内容とは正反対にリラックスして視聴できております。歳のせいでしょうか・・・。