COWBOY BEBOP『ジュピター・ジャズ(後編)』『ボヘミアン・ラプソディ』

「ジュピター・・・」は余韻のあるエンディングまで観て泣けました。岡村天斎渾身の絵コンテで、前後編でしっとりとした(?)ハードボイルドに仕上がった好編でした。グレンは残り少ない己の命を意識した時、かつての自分自身の甘さに決別するためにビシャスと対決する必要があったのではないかと思います。ですから復讐は成し遂げられなかったのですが、グレンが無念のうちに死んだとは思いたくありません。最後の瞬間まで男の尊厳を取り戻す闘いをした彼は、満足して死んで行ったと信じております。どう死んだではなくどう生きたかがハードボイルドのテーマでございますからね。
ボヘミアン・・・」エドが画面に出てきますと色調が一変します。このお話でも「50年越の復讐」がテーマですから渋く描こうと思えば、幾らでも渋くなるのでしょうがエドというキャラを介在させるとこんなにも楽しいお話に仕上がります。
明るいお話に見えるのですが「復讐は虚しい」という普遍的な重いテーマのお話でした。50年後の一瞬の機会を待ち続けた男が、肝心なその時には呆けてしまっていたというのは、なんとも悲しい皮肉ではありませんか。けれどヘックスは最後に思う存分エドとチェスを打って満足の中でその生涯を終えることができたのですから、これ以上ない幸せな死に方ができました。なんとも素敵なラストシーンでございました。