境界の彼方 #12(終)『灰色の世界』

前回ひとりきりで妖夢と戦う未来の表情は辛そうで悲しそうで見ているこちらも同様な気持ちになったのですが、秋人がやって来た今回、前回よりも絶望的な状況にもかかわらず楽しそうで爽快。
戦うというよりも二人でダンスを踊っていたかのようでして、京アニの見事な描写力と相まって幻想的な求愛シーンに仕上がっておりましたし、見ようによっては見事な求愛シーンではかったかと。
未来の復活は必要だったのかなぁと考えたのですが、これがもう少し年齢の高いカップルであればあのまま伴侶を失って永遠の愛へと昇華した方が物語としては綺麗なのかもしれません。
ですが本作は思春期の青少年が主人公でございますので、淡い恋が相応でしょうし、そこまで過酷な恋を強いる必要は無かったということでしょうね。
結局「境界の彼方」はまた秋人の中へ。
これではなんのために皆が苦労したのか分かりませんが、「白い世界」でもなく「黒い世界」でもなく、この世はおしなべて「灰色の世界」であるということなのかもしれません。
はっきりとした色分けはできない、ひどく曖昧なこの世界で人は生きて行くしかない。でも曖昧であるが故に様々な生き方を選ぶことができ、多様な存在も許容されるとしたらそう悪いことではございませんからね。
物語と致しましては「弥勒が世界を滅ぼしたいと願った動機」「名瀬家の結界の中にいる祖父の役割」「泉は何故妖夢を見の内に飼うことになったのか」「秋人ママの正体は?」など積み残しも多数あったように見えましたが、今回の物語の主題は秋人と未来のラブストーリーと考えれば、それらは取るに足らない枝葉に過ぎませんので気にすることもございませんね(笑)
此処から先が二人にとって本当の恋の開幕。
まだ大変な事態が待ち構えているでしょうけど、今度はいつも(悪態を吐きながら)楽しそうに乗り越えることができそうですし、それはそれで観たいのですけど、見せないことで余韻がいまれるのでしょうから我慢することに致します。
本作も京アニも圧倒的な表現力が作品を彩ってくれまして、幸せな時間を過ごすことが出来ました。感謝。