凪のあすから 第十一話『変わりゆくとき』

冬眠が近づき焦燥を募らす光たち。陸の人々もようやく事態の深刻さに気付き「おふねひき」を実行することになったが、というお話。
この作品は「しおししお」とその傍にある陸の町以外ですと美海があかりにあげる贈り物を探しに行った街しか描かれておりませんで、この現象が世界的なものなのか判断がつきかねます。
そして海の人々は世界各地に存在しているのかも不明でございまして、この結果冬眠に至る事態の深刻さが今ひとつ伝わりにくいかと。
かと申しまして、世界的惨事と知らされてしまいますとこの小さな集落で生きる二つの人類、そしてその中でもひときわ小さな存在である子供たちの視点がぼやけてしまうでしょうから、さじ加減は難しいようでございます。
自然の大きな力の前で人の出来る事は何もなく、ただただ災厄が通り過ぎるのをじっと耐えるしかなさそうでして、光たちは自分たちの無力さを気付かされたようでございます。
ただその中でも生きることは続くわけでして、あかりは陸の人たちと暮らす決意を宣言。
自然に身を任すだけではなく人としての意思を持って生きて行くという、自然に対する人の精一杯の抵抗に見えました。
冬眠は避けられないようでございますが、起きる時期はバラバラという事実がなんとも。
もう彼らは同じ時間を過ごすことができなくなるわけで、その事実の意味は冬眠から目覚めた時にしか分からないのでしょうし、それこそが本当の悲劇のような気がしております。