宇宙兄弟 #74『魔法の裏技』

「落ちないバギー」の提案に成功したムッタだったがバトラー室長はムッタを月面クルーに参加させてくれなかった。バトラー室長にアッピールするためにムッタはある「裏技」を試してみることに、というお話。
なんてことのないエピソードに見えましたが、バトラーという人物が単なる冷静な官僚ではなく、部下や仲間、そして友人のことを考えて行動する「熱い」人物であったようでして、そうしたキャラ証明をこの短時間にしてしまう手際のよさに感心。
バトラーとしてみればムッタを予備クルーに昇格させることに問題はないようですが、それは即ち日々人の焦りを生むのではないかと考え、さらにその結果失った仲間に結びついて決心がつかない原因のようでございますが、案ずるより生むが易しとも申しますし、「何か」が彼の背中を押してくれれば後は早いのかもしれません。
一方ムッタの「焦り」がシャロンの病気に由来しているところに泣かされる(笑)
宇宙に行きたい気持ち自体はムッタのものでしょうが、彼自身の夢だけならそんなに焦る必要はないわけで、ムッタが時間に追われているのはシャロンの病気の進行との勝負からでございまして、…こんな時でも人の夢や約束に気を使うムッタは本当にいい男ですねぇ。
バーティカル・クライムロールに挑むムッタでございましたが、アッピールしたのは「熱意」そのもの。
伝える者と受け止める者の意識が共通していないと無駄なアッピールになってしまうところでございますが、バトラー室長は誰よりもその技に込められた「もの」を知っているから成立した素晴らしいシーンでございました。
夢にたどり着ける者は最後まで諦めなかった者。クーパーに足りなかったものはそうした執念だったのかもしれません。
と、これを書いた後ネットをウロウロしておりましたら石田太郎さんの訃報が!
個人的には声優さんとしてよりも役者さんとして認識しておりましたが、カリオストロ伯爵の方であり本作でもデニール・ヤングといった重要な登場人物に命を吹き込んでくれた方でございました。
安らかにお休みください。