Another 第12話(終)『Stand by oneself -死者-』

「死者」は居た。
此処へ至る間に「本当は『死者』は存在しておらず、偶然の事故や病気が重なったことと『噂』が引き金になり疑心暗鬼になった高校生たちが自ら招いたパニックなのでは?」と考えたこともあったのですが、本当に「死者」は存在しておりました。
まあ死者の数が多過ぎますので、「偶然」としてはむしろ不自然ですので「死者」の存在はこの作品としては大前提でございまして、それを疑った自分の不明を恥じるしかございません(笑)
まずは最終話の犠牲者の方々。
川堀(シャンデリアの落下から逃れるも、焼け落ちた柱の直撃を受けて)金木(管理人の妻から刺されて)松井(錯乱した風見に刺されて)管理人の妻(千曳と争っているうちに)風見(赤沢から「バールのようなもの」で殴打されて)赤沢(割れたガラスに貫かれて)の6人。
観ていた限りではもう少し多そうでございましたが、最終回を観終えたのでググりまして(笑)確認したので間違いはなさそうです。
ラスト2話で大量に死んだので多く感じられますが、それまでは生徒に限れば5人しか死んでおりませんのでおっさんが「死者なんているの?」と考えたのも当然と自己弁護しておきます(笑)
以下ダラダラと長くなったので折り返し
映像作品としての「Another」の感想
1話冒頭3年3組にまつわる噂話の音声の後ろに流れていた「画」がその後起こった「現象」の数々を描いておりまして、水島努監督は全てを一度「完成」させてからこの物語を語り始めたのでございましょう。
いやそれは当然のことなのですが、こうした「ミステリ」の場合、巧妙に隠ぺいしておかなければいけない事、さりげなく提示しておかなければいけない事が常に交錯いたしまして、完璧にパーツ配置をする構成力が必要でございます。
「見せ方・隠し方」は文章でございますと「文字の森」に紛れ込ませることは比較的(あくまでも「比較的」でございまして、文章力のない作家の場合はこの限りではございません)容易でございまして、「あれ?こんな記述あったかな?」と思っても事件が解決してから読み返すとちゃんと書かれているということはよくございますが、映像の場合これが難しいことは過去の経験から明らかでございます。
「映像作品」の場合「ポイント」を明確にし過ぎてもいけないですし、あまりにぼかし過ぎては「ポイント」を提示した意味がございません。この「適度に」というのが実に難しいのですが、本作は終了した時点で全てが納得できる描き方がなされておりまして、視聴者に「誠実」でございました。
また「何処に何時」情報を見せるかということも問題でございまして、早過ぎれば「ネタバレ」してしまい興醒めですし、遅すぎれば情報の意味をなさない。だからこそ描き方には細心の注意が必要なのですが、本作はその点に関しましても成功していたかと。
物語としての「Another」の感想
思春期の一時、心と体のバランスが崩れてしまう時期がございます。もう少し子供なら大人に依存する事も平気ででき、もう少し大人になれば冷静に対処する事も可能なのでしょうが、中途半端でどうしようもない時期。
その中途半端さは成長の過程におきまして必要なものではございますが、本来人生の中でもっとも生気あふれる時期の一瞬のエアポケット、「生者」と「死者」の中間に置かれる時期。
…ある意味で常に「死者」と隣り合わせのような状況に置かれている訳でございます。
生きるべき道を手探りしている時期だからこそ彼らはパニックに上手く対応する事ができず「自滅」の道を歩んでいたのかもしれません。
もし上手く立ち回ることができれば、友人との関係をしっかりと築くことができていれば、少なくとも合宿所の犠牲者はもっと減っていたのかもしれませんし、「異物」である恒一を受け入れ対処できていたのかもしれない。
でもそれが出来ないからこそ不安定な「思春期」であるのでしょうし、「死者」を招き入れてしまう原因だったのかもしれません。
「現象」が止まったというのは単に「死」から逃れられたという意味だけではなくて、彼らが「思春期」から脱したという意味も込められていたんじゃないかと。
恒一や鳴は「死」を受け入れて無事「卒業」いたしましたし、あの「惨事」を生き残ったクラスメイトも同様でございましょう。
本作におきましては「死者」は存在いたしましたが、それは同時に(原作を読んだ方々や、アニメを観た方々)誰もが「死者」と過ごした時代を過ごしたことはあるという示唆だったような気が致しました。
さて、「今年の」現象はこれで終了でございましたが、「3年3組」が永遠に巡って来るように「死者」もまた巡ってまいります。新しい「彼ら」が勅使河原や望月の「忠告」を探すことなく「現象」を回避できるか否かは偏に彼ら自身の成長にかかっているでしょうが、それはまた別のお話でございますね。
P.A.WORKS」の作画・美術の実力もいかんなく発揮されておりまして、映像作品として堪能させて頂きました。声優さんや公式サイトを管理して下さった方も含めまして全てのスタッフに大感謝でございます。
面白い作品をありがとうございました。

ドアの外にいる赤いドレスの女の子は「鳴」なのか、それとも「藤岡未咲」なのか。それが最後まで分かりませんでした、残念。