UN-GO 第5話『幻の像』

「爆弾三勇士」に触発されたお話かな?
ひとつの「事実」があって、それを歪曲した「真実」に仕立てて権力者が利用し、大衆はその「美談」に歓喜するというのは何も昔のことではなく、現在進行形で行われている行為に外なりません。
我々はその捻じ曲げられた真実の奥にある事実に行き着く事が出来るのかと申しますと多分無理。権力者によって何重にもかけられたフィルターを全部取り除くことなんて、一般大衆には難しいですし、なにより心地良い美談の奥にあるつまらない事実などに興味はないでしょうから。
人は見たいものしか見ないという特性がございまして、それが事実なのか「作り上げられた真実」なのかなんてことはどうでもいい事なのですから。
今回の事件にしても新十郎の暴いた事実はこれまでと同様海勝によって都合のいい真実として処理されてしまうでしょうし、なにより新十郎は死んでしまった三人の「本当の事」にはたどり着けなかったのです。
新十郎はただ殺人者と金塊の在処を明らかにしたに過ぎず、そこが人の限界を示していたように見えました。誰も本当の事なんて知り様もないのだ、と。
新十郎につけられた「敗戦探偵」という蔑称は単に毎回海勝に負けたように見えるからではなく、彼自身が希求するもの、本当の事にたどり着けないから「敗戦」なのかもしれませんね。
それでも新十郎は今日も本当の事を探そうと戦い続けているようでございます。それこそが人として生きて行く上で必要なことだと云うように。
…久しぶりに會川先生の「本気」を見たような気がいたしまして、嬉しゅうございました。