電波女と青春男 十二章(終)『秒速0.00000000198センチメートル』

お祭りの主催を賭けた草野球の本番当日、商店街チームのエースである前川さんの父親がプレッシャーに負けて逃走。急遽監督になった女々の指示により先発はエリオ、真は前川父の捜索を命じられて、というお話。
う〜ん、実に不思議な作品でございました。
最終的に作品内で語られていたエリオの消えた6か月ですとか、エリオットの行方、ヤシロの正体、駄菓子屋のおばちゃんのこと、女々さんのこと、そして匂わしては消し消しては匂わせた宇宙人のお話など、数々の謎は一切解き明かされることなく終幕とあいなりました。
で、それが不快かといえばそうでもなく。
エリオが主人公であったなら、物語として彼女の周囲の問題は重要な要素だったでしょうが、真が主人公ですとそれらは全て彼の日常生活の一要素でしかございませんので、特に解明する必要がなかったという事なのでしょう。
真にとっては不思議な従妹のエリオがいて、リュウシさんや前川さんとの交流、女々さんに振り回される事の方が重大な問題であり、真が世界の中心にいる構成である以上「謎」に深い意味が置かれておりませんでしたので、「謎」は放置されていても気にするほどの重さはなく、結果未解明のままでも不快感は湧かなかった、と。
もちろん解明されていた方が良かったとは思うのですが、それはこの先の(アニメでは描かれない)長い物語の中で徐々に真くんが見つけて行く事に意味があるのであって、作品の尺の都合で端折って語られるべき性質の「謎」ではないでしょうしね。
他にも始めの数話以外(キャラ紹介をかねていたエピソード以外)のどのエピソードを「最終回」としても成立して見え、この後(作者が飽きなかったとして)100話くらい続いたとしても同じような後味を残せそうな構成の不思議。
どのエピソードを切り取っても単独で成立する作り方は大変楽しゅうございました。これでエリオたちとお別れなのは残念過ぎますので、必ず小説を読むことにいたします。そしてそんな気にさせてくれたシャフトの作り方にも感謝を。