花咲くいろは 第9話『喜翆荘の一番長い日』

宿泊客が急増した喜翠荘だったが、スイの入院と徹の不在で窮地に陥る。そんな中緒花の奮闘が喜翠荘を救って行く、というお話。
…上記のようなお話だけでも内容としては十分なのですが、ここに旅館ランキングの覆面調査員のお話ですとか孝一くんとのすれ違いなども放り込んでおりまして、詰め込み過ぎの弊害から散漫な印象を受けてしまいました。
孝一と緒花のすれ違いは、次回以降のブリッジとして必要でございましょうし、すれ違いをスムーズに見せるためにも「忙しい緒花」が必要だったのでしょうから、今回挿入していたのは問題がないとして、旅館ランキングのお話はそれだけでひとつのエピソードとして成立させた方が良かったのではないでしょうか?
スイの「お客様はどなたも大事」という心得を台詞だけでなく様々な状況で婉曲に表現でき、スイのそうした生き方を台詞ではなく緒花自身が発見して行くように仕向けた方がスマートだったでしょうし、それでこそ緒花の成長を描けたと考えますと、折角のチャンスをフイにしてしまったような気がしてなりません。
最近は本作をコメディとして視聴しておりましたが、そういった見方をいたしますと今回はそちらの方面でも中途半端に感じられました。折角右往左往できる状況でございましたのに笑いのパートを緑・崇子・太郎だけにふってしまい、そこもありきたり且つ短すぎて笑いを生じさせるまでに至っておりませんでした。
7話くらい弾けて下さいますと宜しかったのですが、今回はそういう雰囲気でもございませんでしたので致し方なかったのかもしれませんが、これでは緒花の成長を描くといった正統派としても、喜翠荘のゆかいな仲間たちとの面白おかしい日々を描くにしてもバランスが悪いように見えてしまいます。
作画と美術の美しさや、レイアウトを始めとする演出面には大満足しているのですが、肝心の物語が些か迷走しているように感じられることが残念でございます。最終盤での巻き返しに期待したいところなのですが…。