C #6『conflict(葛藤)』

公磨は次の対戦相手の「宣野座功」からディールをパスしないかと提案される。パスした場合持ち金の半分を金融街に収めなければならない仕組みだったが、その金は自分が払おうと功は言う。功は戦わない事によって金融街の現実への影響力をなくそうと模索していたのだった。功の提案に悩む公磨は、というお話。
功の「可能性の失われた未来しか残らないなら、現在がある意味がない」という言葉も共感できますし、壮一郎の「未来と言ってもしょせん現在からの地続きで、現在が失われれば未来も存在しない」という言葉にも納得させられました。
ただここでは壮一郎氏の語る方が説得力があるかもしれませんね。未来は確定しているものではございませんから、現在の努力で未来は変えられるのかもしれないのですから。
もっともこれは一般論でございまして、本作のようにディールする度に目に見えて未来が変わる…、いや消えて行くとするなら功のような考えの方が正しいのかもしれませんね。
でもその考え方自体も壮一郎の言う通り「持てる者の言いぐさ」で、公磨の働くコンビニの同僚のおっさんのように(そして大部分の人間もそうである通り)「今」を生きるのに必死な者にとって、来るか来ないか分からない未来よりも「今」の方が大事ですし…。
この作品のいう「未来」が自分だけの未来ならば、よくある「悪魔の取引」の物語にすぎないのですが、本作主人公の公磨は自分の未来に関わる全ての人たちという大きなものを背負わされておりますので、ならば人はどう行動するのか、そしてどう行動して責任をとって行くのかまで描かれると嬉しいなぁ。
この国の抱える巨額の借金(未来からの借金)から発想された作品だと想像いたしておりますが、発想だけで満足せず作品としてキチンと成立しているところにも満足しております。