屍鬼 #22(終)『蔡蒐話』

外場村壊滅。
ということで全ては炎に包まれて、守るべきものも奪おうとしたものも灰燼に帰してしまった、と。
終わり方といたしましては順当に見えましたし(本当かっ!)、描くべきものは描いていたと思えましたのでこれといった不満もございませんでしたが、前回の感想でも書きましたが最近のアニメの尺としては長い方でございましたが、それでも足りないように見えてしまったところが残念でございました。
村人各人の抱える事情を丁寧に描く事が、この作品の恐怖(というより「狂気」でしょうか)を多面的に浮き上がらせ、それがひとつに収斂した時更なる恐怖へと視聴者を誘う仕掛けになっていたと思うのですが、それには22話でも足りなかったという事なのでしょうねぇ。
ただ、これ以上の余韻を味わいたければ原作を買え!という事なのでしょうから、そこは素直に従うことにいたしましょう(笑)
恋愛作品としての「屍鬼
お互いが敵対しておりましたが、一部の人間と屍鬼にとりましては双方を「離れ難い魅力ある存在」として認識しておりまして、これはすなわち「愛」以外の何物ではない訳でございまして、つまり本作は「ラブストーリー」でございました。
作中「血を吸われた人間は、屍鬼の命令に逆らえない」という描写がございましたが、あれだって「接触したことで相手に恋をして逆らえなくなった」と考えられなくもございません(いや、無理があるかw)
「食事」として人の「血」が必要とも描かれておりましたが、単に食事であれば「血液」でも構わない訳で、病院や葬儀社や運送屋まで営む生活力のある彼らでしたらそちらの方が簡単だったでしょう。
そうしないで生きている人から直接接種しなければならなかった理由は、「人」と触れ合いたい、自分のものにしたい、食べたい(…いや、これはないかw)という「恋愛衝動」の現れではなかってでしょうか。
沙子が外場村にやって来た理由も、静信の小説を読んでその世界に「恋」をしたから。ただそれだけの単純な理由だったように見えたのでございます。…まあ結果的に壮大な「はた迷惑」になってしまった訳でございますが、古来「恋は思案のほか」と申しまして、人も屍鬼も理性を失わせるには十分な動機だったということかと。
そういう風にこの作品を視聴いたしますと、静信と沙子の恋愛は成就いたしまして「ハッピーエンド」でございました。…巻き添えで犠牲になられた人にとっては何の救いもございませんでしたが。
「あちら側」と「こちら側」の相克といった視点で本作を眺めれば(そしてその方が妥当だと思うのですが)違った見方も出来ますが、このアニメ版の場合はその「材料」が足りないように思えまして、あえて「恋の物語」として感想を書いた次第でございます。
最後の疑問
EDに「数日後」の描写がございまして、元気になった田中姉弟が乗っていたバスに夏野の両親(に見えたのですが)が乗り込んでまいりましたが、あのバスの行き先は「外場村」だったのか、それとも「外の世界」だったのか分かりませんでした。
行き先ひとつで意味するところは全然違うと思うのですが、画面が小さすぎて確認もできやしない(笑) 最後にあんな描写は勘弁して頂きたいものでございます。気になって眠れませんでしたよ(笑)