心霊探偵八雲 File13 (終)『失意の果てに〜久遠〜』

斎藤雲海の目的は、八雲の心が憎しみに支配された時、その体を乗っ取る事であった。八雲が雲海によって支配されたかに見えたのだが、というお話。
取りあえず八方丸く収まって、めでたしめでたしではございましたが、人の心は常に「魔」の誘惑にさらされていて、簡単にそちら側に転げ落ちてしまう危うい存在なのだよと、終わらない物語を示唆する…、まあよくある終わり方ではございましたでしょうか。
ですが、そうした終わり方は嫌いではありませんので問題なし(笑) と申しましょうか、こういう作品ではこれ以上オチのつけ方はございませんでしょうから、ね。
小説というものでは、映像作品で見られる壮大なアクション描写はあまり得意とは思えません。そういう描写が文章で書かれております時は、読み手の想像力に委ねられた部分が大きい訳でして、具体的に頭の中で再構築できませんと作者がどれほど力を入れて書いてありましても「伝わるもの」は少ない様な気がするからでございます。
一方で、心理描写と申しますか、微に入り細を穿って登場人物の心の内の描写という「目に見えないもの」の描写は映像作品よりも得意でしょうか。ですが、それ自体はとても地味でございまして映像作品でそれを延々と見せるというのもあまり意味はないかと存じます。
本作のように、心の闇ですとか人の心の弱さというものを伝えようとする作品におきましては、多分アニメよりも小説の方が向いているように思えます。
スタッフは頑張っておられましたが、基本的に映像として起伏に乏しい作品でございましたので、「絵」としては残念だったと思えてしまいました。こういう作品は中途半端に動かすよりも、カット割りやレイアウトで見せた方が作品の本質が伝わりやすいように思えました。
まあ、推理物ですとか心霊ものって、映像化は難しいかと。いっそ「うみねこ」くらい外連味あふれる題材でしたら映像としては楽なのかもしれませんね。