刀語 第九話『王刀・鋸』

今回も基本的なお話の流れはこれまでと同じで、奥州天童へ「王刀・鋸」を回収に行ったお話。対戦相手の「汽口慚愧」は多分これまでで最弱かもしれませんでしたし、変体刀も木刀と意表を突いたものでした。
そして何故刀を回収するのか、その先に何が待っているのか、そして否定姫の目的は何なのかなど、終わりが近づいてきて緊迫の度合いは高まってまいったのですが、そうした雰囲気をそのままストーリーに反映しないあたりがこの作者の持ち味でしょうか。
緊張感と殺伐としたお話とアクションシーンは真庭忍軍と左右田右衛門左衛門に任せて、とがめと七花が何をしていたかというと痴話喧嘩(笑) それもとがめの一方的な嫉妬からくる痴話喧嘩でございました。
本当は七花と慚愧の会話の中に色々と伏線らしいものもあったのですが、新妻の可愛い嫉妬描写と「それ誰?」という絵に全部誤魔化されてしまいましてなぁ(笑)
このへんは文章で読んだ場合誤魔化しが効かないと思うのですが、「絵」で表現されますとどうしてもそちらを注目してしまいます。
提示した情報を有耶無耶にしておくと、後々になって(とは申しましても残りは3話しかないのですが)視聴者に「あっ!」と驚かせながらも作者としては「フェア」でいられますから、この辺の「隠し方」に作家さんたちが苦労するところでしょうが、仮に七花と慚愧の会話の中に本当に伏線があった場合上手いなぁと思います。
それくらい今回のとがめは可愛く描かれておりました。
そして邪気がないように見えた鋸もさすが変体刀。渡した後の慚愧の豹変ぶりにそれを表現したオチも笑わせていただきました。
残り3話でございますから今回のようなホノボノとしたエピソードはこれが最後だと思うのですが、緊張と緩和のバランス、こちらの意表を突きまくる構成と、「底」がなかなか見えにくい作者でございます。