けいおん!! 第23話『放課後!』

みんなが揃う最後の放課後を過ごすお話。
なるほど、こうしてきっちり最後まで学園生活というものを描かれますと、この作品の方向性が「成長」というものに重きを置いていたのではなく、日常の何気ない風景の中の、他人にとってはありきたりで取るに足らない事の中にある「きらめく瞬間」を拾い集める事に傾注していたのだなぁと実感いたしました。
しかもそれは学生時代でなければ経験できない事だったようです。
そういう小さな幸せというものは大人になっても発見することはできるでしょうが、基本的に大人というものは単独で行動するもので、プライベートな時間であっても「誰か」と同じものを共有するということは中々難しいものでございます。
「学生」という身分はそういった時間や空間の制約といったものから一時的に解放されておりますから、気が置けない友人とそういった「何か」を見つけたり感動を共有することは容易です。
そしてそれは一人で感じるよりももっと素敵な記憶になるでしょう。
卒業式前日、部室で「幻のゴールデンチョコパン」をみんなで初めて食べた。それはそれは甘くて美味しかった。歳を取っても「どこで」「誰と」「何を」食べたという記憶は永遠でございましょう。パンの味は忘れたとしても…。
これは今回のエピソードでございましたが、ここまで描かれたエピソードすべてがそういったものの羅列であったことに思い至りました。キャラクターたちが生きている今を見せながら、永遠をも感じさせてくれる。…山田さんや吉田さんをはじめとするスタッフ各位の素晴らしいお仕事でございますね。
残したもの
記憶違いでなかったら、カセットテープはさわちゃんが学生だった時のものも部室にありましたよね?
であればこの行為は「軽音部のHTT」として最後のお仕事ではございますが、恐らくあれほど頑張って録音したものであっても、唯たち誰かの手には残らず部室の片隅でモノリス(笑)になることは想像に難くありませんが、そうなる事で「未来の軽音部の誰か」に向けられた伝言としての役目があのカセットには与えられと思います。
観ておりまして、てっきり紬か澪がデジタル録音機を持ち出すものと思っておりましたが、それですと過去の(さわちゃんたちの)カセットとの連続性が絶たれてしまうのでしょう。
だから「ラジカセ」で「カセットテープ」に録音しなければならなかった、「過去」と「現在」と「未来」をつなぐ意味を表現するために、と。
…MDはもう新機種が販売されていないけれど、ラジカセはまだ売っておりますから、カセットテープって案外寿命は長いのかもしれませんね(笑)
次週最終回。…多分泣くと思います(笑)