けいおん!! 第20話『またまた学園祭!』

「学園祭シリーズ」最終話。HTT最後の学園祭ライブのお話。
講堂の中では盛り上がっていたけれど、随所に講堂の外の描写をインサートすることで、この盛り上がりは極一部の限定されたものでしかございませんというスタッフの現実感覚が頼もしい。
盛り上げようとすればいくらでも盛り上げられそうなのですが、それをしちゃいますと「けいおん!!」という作品から外れてしまいそうですからね。
ライブにしたところで唯のMCは聴いていて「寒い…」と感じてしまいましたが、ここまでの唯のキャラ設定であればあれで当然なのですし、あそこで感動を強要するような熱弁をふるうのは唯らしくございませんので、スタッフの「ブレない」作りにまた感心。
これまであまり外部との接触描写がない本作が、この3週クラスメイトや他の学生たちとの接触が描かれていたのはこの日のための伏線(というほど大げさではございませんが)だったようです。
バンドというものだけを描くのでしたら「観客」の描写はいらないのかもしれませんし、本作においてHTTの観客とは我々視聴者でしょうから、作中の観客(や外部の人間)を「キャラ」として描くことはHTTと視聴者の距離を遠ざけることになるから避けていたのだと思います。
ですが最後の(当然今回のことではございません)盛り上がりには、このささやかな物語の、この小さな小さな「HTT」という塊だけでは足らないのでしょう。同じ空間と時を過ごした「仲間」の存在が必要になる、その時のために!…というのはいつのも早合点だと思いますが(笑)

  • 部室というゆりかご、あるいは還るところ

ライブが終わった後、あるはずもない「来年」を語り合って泣き出すHTTの面々。グータラに見えていても「今」を精一杯生きているからこその涙に薄汚れたおっさんも泣く(笑)
あの頃「今」を生きていなかったから、「来年」なんて想像もできなかった本当のグータラが書いておりますので本当だよっ!
それはともかく、泣きつかれて眠った唯たちを見ていて、この作品の本当の主役はこの部室ではないだろうかと考えたわけでございます。
駄弁って、お茶を飲んで、お菓子を食べて、笑って泣いて怒ってまた笑う。そのほとんどがこの場所で繰り広げられ、外で何かをしたとしてもまたここへ帰って来る。
唯たちだけではなく、さわちゃんだってかつてはここの住人でございまして、唯たちがいなくなっても梓は残り、その梓も去ったとしても「誰か」が新しい住人になる。そしてまた違う青春がこの部室で繰り広げられるんだろうなー、と夢想しながら今回は視聴いたしました。
さて、この流れで行きますと「謝恩会」(今でもこう言うのだろうか?)が最後の山場になりそうですが、どのような山場になるのか。今から楽しみでございます。
最後に。今回劇中歌われた「ごはんはおかず」の作曲者bice(本名・来嶋優子)さんが7月26日に心筋梗塞でお亡くなりになったそうです。合掌。