鋼の錬金術師 最終話『旅路の涯』

堪能させていただきました。
一言で感想を書けばそれだけですし、多分それで十分だと思います。良い物語に出会えて、その物語と決別しなければならない時、寂しさと爽やかさを同時に感じますが、うん、本当にそんな感じです。なんと申しますか「言葉はいらない」でしょうか。
ですので、思いついた事をいくつか書いてお茶を濁そう(笑)
1.
この作品世界では「錬金術」や「ホムンクルス」というファンタジーの要素が前面に押し出されておりますが、なに、ファンタジーとてそこに描かれるものは現実世界の写し絵でございますから、最終的に語られるものは「ひと」そのものでございます。
その意味で本作は「道具」としての錬金術ホムンクルスに振り回されることなく、最後の瞬間まで「ひと」を描くことに徹しておりました。ですがその「ひと」を描くために「等価交換」「真理の扉」は必要でしたし、それを円滑に表現するためにはこの「道具」は必要だったと思います。
物語を語る上で必要なものを用意し、十二分に利用し、でも一度決めた「設定」を後出しじゃんけんのように都合良く扱わない。本作創作者の自己を律する姿が垣間見えるようで、見事としか書きようもございません。
2.
今回のエピソードの中で一番嬉しかったのは、エドとアルが「ニーナ」の事を忘れていなかった台詞でございましょうか。彼女の存在こそが人の欲望と「錬金術」のもたらす影の象徴であり、この物語の本質が凝縮されたキー・キャラクターでしたしね。
ひとは何でも見通せる神ではございませんし、錬金術師とはいえ出来る事と出来ない事があるのだと(改めて)エドとアルに教えてくれたのがニーナでございました。そしてひとの「欲望」が作り出す不幸を教えてくれたのも彼女だった訳です。
本当に欲しいものは錬金術では得られない。
長い旅の涯にエドとアルが(特にこれといった描写はありませんでしたが、もしかするとずっと心に引っかかっていたのかもしれませんが)彼女の事を思い出し、そして掴んだ「真理」とはそういうものだったのかもしれません。
3.
幸いなことに、生き残った者たちは(ホムンクルスの「プライド」も含めて)皆それぞれの新しい生き方に向かって歩を進めることができました。
一見いたしますと万事めでたしめでたしのようにも思えますが、各人はそれぞれに「新しい荷物」「宿題」を背負って再び旅に出かけます。死者や傷ついた人々に対する生き残った者の責務。とてもとても重い約束。
でも彼らはそれを自覚し、叶えるために「明日」を生きていく決心をして旅に出るわけです。
目的地は分かっている、でもその道のりは遠く、どこまでも遠く。たどり着ける保証などない旅に。
ですがEDのバックに流れた彼らのその後は、その旅の中間地点ではございましょうが、皆良い顔をしておりました。彼らが「約束の地」へたどり着くことを予感させて幕。…実にすばらしい終わり方でございました。
最後に
64話というロングランではございましたが、毎回見事な絵作りをして下さった制作スタッフには感謝の言葉しかございません。この絵作りがあってこそ「ハガレン」という作品は物語に集中して視聴できたのだと思います。
この作品とこれでお別れと思いますと、来週から何を楽しみに生きて行けばいいのかっ!(笑)
喪失感が半端なく大きゅうございます(´;ω;`)