刀語 第三話『千刀・ツルギ』

三本目の刀を求めて「とがめ」と「七花」が訪れたのは出雲の三途神社。神社の実質的な長・敦賀迷彩が「千本で一本」千刀・ツルギの所有者だった。その神社と敦賀迷彩には悲しい事情があったのだが、というお話でした。
物語としては三話中一番「鬱」展開で、この相手ならば奇策士とがめがその能力を尽くしてなんとかしてみろ!と思いながら視聴いたしました。まあ、鬱々とした気分になってしまったのは、相手が道理の分かる人物で、女性で、守るものを持っていて、それが戦国時代の犠牲になった女の子たちだったからなのですが。
神社に集う巫女たちや、迷彩の千刀流の後継者としての悲しい過去などが語られ、その重さに萎えてしまいました。でもよく考えて見ますと飄々と生きているようの見える七花も同じような過去がございますし、迷彩も別段自分の過去を悲しんでいるようには見えません。
二人の生き様は多少違うのでしょう。迷彩は過去を飲み込んでそういった境地へ到達し、七花の場合は知らない者の恐れのなさかもしれません。・・・しかし今回「俺は父を殺した」と語っておりましたから丸っきり無垢という訳でもなさそうですし、彼もまた何かを乗り越えてあのような生き方が出来るところへ到達したと考える方が妥当なのでしょうか。
「戦わずして刀を手に入れる」ことは可能だったかもしれませんが、その場合迷彩は「剣士」としての存在理由を永遠に失ってしまう。それは「人」としては生きているけれど、「魂」は黄泉の国の住人となる事を意味している、と。
後請の憂いがなくなった迷彩は「剣士」として生きる道を見つけた。七花を見て剣士の本能が戦いを望んだと思えば、この闘いは必然であり・・・当然立ち合いに及んで死は覚悟したでしょうが、負けるとは考えていないでしょう。「死」は単なる結果に過ぎない。実に爽やかな物語・・・って、アレ?最初と印象が違ってます(笑)
さて、このような「好人物」を相手にいたしますと七花の人間として欠落した者が浮かび上がってまいります。現状では七花はただの「道具」に過ぎません。相手に応じて凶悪な武器にも便利な道具にも見える。
それは彼の本心が描かれていないからだと思いますが、実は本当に「空疎」なのだという可能性も(笑) その辺りの解明は今後のお楽しみだと思いますが、作者がそこを描くつもりがない場合には空振りに終わりそうです(笑)
会話の多さや細かいギャグに騙されそうになりますが、やっていることはアップ・トゥ・デイトされた剣豪作品。人物描写にやや深さが足りないような気がいたしますが、それこそ今の時代に必要のないものかもしれませんので問題なしです。
次第に多くなってきたアクションシーンでの作画も見事で、これだけのものを見せていただけるのでしたら一ヶ月待つのも苦になりません。予告を観ておりましたら次回はもっと動いていたので楽しみでございます。