とある科学の超電磁砲<レールガン>

原作の前半部を受けて、オリジナルの後半部を作り、24話で「ひとつの事件」の物語を作り上げたスタッフの「腕」を見せていただき幸せでございました。
「インデックス」のように原作を消化することに汲々としたところもありませんでしたし、(内部の人はご苦労なさったでしょうが)お話の流れに余裕があるように見え、色々な角度から物語を見ることが出来た事も嬉しかったな、と。
ただ、視聴中ずっと気になっていた事がございまして、それは御坂美琴の不在という事でございました。
これは佐天・初春・黒子はもとより鉄装や固法はては寮監さまに至るまでキャラの描き込みをしていたと言うのに、肝心な主人公御坂美琴の描き込みの薄さに起因しているのだと思うのでございます。
作劇において主人公を直接的に描くのではなく、その周りにいる脇役を描いて間接的に主人公を浮かび上がらせるという手法があることは知っております。実際本作は脇役の方に力点が置かれておりましたし、そうしたかったのではなかろうかとは推測してみたりもいたしました。
その目論見があったと仮定致しましても不発だったように思えます。御坂美琴は友のために「怒り」「走り」「闘い」はしましたが、彼女自身の「葛藤」や「悩み」「苦しみ」については何も描かれていなかったからでございます(単に私が見落としただけかもしれませんが)。
でも、もしかすると、スタッフは意識的に御坂美琴の人物描写を避けたのかもしれない、それが本作において御坂美琴が物語の進行に必要なだけの存在になってしまった原因だったのかもしれません。
本作が独立した作品であれば、スタッフは迷う事なく主人公である御坂美琴を徹底的に描いたでしょう。そしてそこでは魅力溢れる御坂美琴を見ることが出来たと思います。それはこのシリーズを観て、スタッフの力量を見せていただきましたので間違いないと。
ですが「レールガン」は「インデックス」の外伝という位置付けです。御坂美琴は「インデックス」においても重要なキャラで、本作で勝手に「色」を付けてしまう訳にはいかなかったのでしょう。
本編「シスターズ編」におきまして御坂美琴は肉体的にも精神的にも追い詰められることを私たち「インデックス」を観た者は知っております。そしてその時彼女の周りには黒子も初春も佐天も固法も誰もいないのです。彼女を救ったのはチョロチョロ(笑)と登場していた上条当麻ただひとりでございました。
もし彼女が本作でしっかりとした考えを持ち、仲間との絆が今以上に固く結ばれたところまで描いたのなら。今度は本編で徒手空拳の御坂美琴に齟齬が生じてしまうことでしょう。多分本作の描写がギリギリの線だったと思います。これ以上踏み込む訳にはいかなかった。
これが原作付き、しかも外伝という位置におかれた作品の限界点なのかもしれません。そうした制限の中で奮闘して頂いたことだけは感謝いたしますし、私といたしましては本編より数倍面白かったと書き残しておきます。
可能でしたら今度は「本編」という呪縛から解放され、中学生らしい感情の起伏に富んだ御坂美琴の青春を見せて頂きたいものでございます。