テガミバチ 第十七話『テガミバチとディンゴ』

 今回は「ジャンプスーパーアニメツアー」での『光と青の幻想夜話』を再編集して放送するのかと思っておりましたが、丸っきりの新作でございました。手間を掛けますなぁ。ちなみに『光と青の幻想夜話』は脚本が大石哲也さんで監督と絵コンテは神戸守さん。今回のテレビ版は脚本が吉岡たかをさんで絵コンテが影山楙倫さんでした。
 どのスタッフもテレビ版に関わっているのですから再編集版でも問題がないような気もするのですが、「切る」という行為で「元」の作品の雰囲気が著しく損なわれてしまいそうでしたので、これはこれで正解なのかもしれません。
 ラグとニッチは、館長のラルゴからの依頼でヨダカ地方の町「シレンシオ」へ小包を届けることになった。受取人は昔テガミバチとして働いていたエレナ・ブラン。そして今回は「ダーウィン」という案内役を付けると館長は言うのだった、というお話。
 細かい変更はありましたが大筋では『光と・・・』と同じで、配達途中で死んでしまったビーのエレナを待ち続けるディンゴダーウィンの安息までの道程と、エレナと同僚だったロイド館長の彼女に対する追悼、そしてなによりテガミバチディンゴの結びつきを描いた好編。
 神戸版とテレビ版の大きな違いはラグの扱いでしょうか。これは発表形態の違いから来るものだと思うのですが、独立した(テレビ放映前の作品です)神戸版はあくまでラグとニッチを中心に物語を構築していたのに対し、テレビ版はシリーズの中の1エピソードとして作られておりますので、単純にラグとニッチのエピソードとしては作られていない、と。
 その「焦点」の当て方の違いが、エレナの墓の前のシーンでの私の感情の昂りに違いが出たんでしょうね。ラグが涙でグチャグチャな顔のまま「いってらっしゃい!」というところにクライマックスを設定した神戸版と、今は亡き友人エレナと付き添って逝くダーウィンを想うロイド館長の回想に設定したテレビ版の違い。
 だからといってテレビ版が劣っていると書いている訳ではございません。神戸版では若干「いらない」と思われたシーンもございましたし、テレビ版はそこを上手くカットし「観易く」仕上がっておりましたのでどちらも甲乙付けがたい出来でございます。
 ここ数回登場しなかった「ラグの泣き顔」を見れたので非常に満足いたしました。やはり本作は誰かのために泣くラグが不可欠かと再確認いたしました。