テガミバチ 第十五話『愛の逃避行』

 配達帰りのラグとニッチが乗った馬車には訳ありげなカップルが同乗していた。そこへならず者たちが襲いかかってきたが、二人の熱愛ぶりに感化されたニッチはボニーとモスを守るために戦うが、このカップルには秘密があった、というお話でした。
 このお話もアニメオリジナル。やはり少し「弱い」でしょうか。一番弱いと感じるところはラグが「テガミ」という心を運ぶ職業であることの必然性がオリジナルの脚本では見られないところだと思います。
 さて、先週のお話を観た次の日書店にて「テガミバチ」既刊8冊を購入いたしました(笑) もうね、製作陣の思惑通りですよ。

テガミバチ 1 (ジャンプコミックス)

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 で、原作を読んでからアニメを観ますと、少し違った感想になったりいたします。
良かった点
 当たり前の事ではございますが、なんと申しましても色が付いていることでしょう。原作のカラーイラストはアニメよりもずっと深い青や紫が使われていて実に素晴らしいのですが、残念な事に全編を通してこの色使いを拝見する事はできません。
 アニメの色はそれから見ればノッペリとしてはおりますが、原作の良さを出来るだけ再現しようと努力しているように思えます。青と紫と黒の見事な組み合わせと、それを引き立たせながらも主張するニッチの金やピンクが見られるだけでもアニメ化されて良かったかと。
 で、当然のように動いている事の感動・・・、当たり前すぎて忘れていた感覚が蘇りました。そうなんです、アニメは動いているから楽しいんです(笑) 原作でのニッチも動いてはおりますが、それこそ「メディアの違い」でフレームの中を動き回る点では原作以上に魅力的でございます。
 そしてそれらのキャラクターに命を吹き込む声優さんたちの演技。これは私がアニメを観てから原作を読んだのでそう感じるのでしょうが、最早ラグは沢城さんの声しか浮んでまいりませんし、ニッチは藤村さんの声でしか喋ってくれません(笑)
 こうしたアニメ化されたことで「付いた色」が良い事なのか悪い事なのか、受け止め方は様々でしょうが少なくとも私にとりましてはプラスでしかありませんでした。
残念だった事
 アニメは原作の3巻くらいまでは準拠されていたようですが、その後はオリジナル色が強くなってまいりました。これは原作がまだ完結していないという事が大きな原因でございましょう。この場合製作陣ができる事は「アニメ用のラストを作る事」か、「原作を尊重して原作の世界に干渉しない最後を用意する事」のどちらかになりますが、本作は後者を選択しているようです。
 とは申しましても原作にあったのに抜けてしまった「テガミバチディンゴ」や、そもそもラグがテガミバチを目指すきっかけとなったゴーシュのお話をどうするのか、はたまた個人的には絶対描いて欲しい「ブルー・ノーツ・ブルース」シリーズなど、心配の種は尽きません(笑)
 そして今回のお話のようにテガミを運ぶ事という一番重要な要素を取り除いてまでオリジナルなお話を作る事は残念と書かざるを得ません。この作品のキモはあくまで「心を届ける」ことにまつわるお話なのですから。残るお話は頑張っていただきたいと思います。