戦う司書The Book of Bantorra第10話『変人と母親と黒蟻の巣』

 武装司書と神溺教団の虚々実々な展開も宜しいのですが、こういう展開のほうが私の好みではございます。
 ハミュッツに匹敵するほどの力を持ちながらバントーラ図書館の奥深くで隠遁生活をする武装司書モッカニアという設定がまず好み(笑) 本編中少しだけ触れておりましたが、過去に彼がかかわった事件で心に傷を負いヒキコモリになったそうですが、こういう「立ち直れないところからの帰還」というのは私の大好きな冒険小説の最大のテーマですからね。もっとも本作がそういう作品かといえば、…多分違うと思いますが。
 ただこの設定でひとつだけ不満があるといたしますと、彼に取り憑いたのが「母親」だということでございます。これは作品の流れやモッカニアの過去との絡みからそうした設定になったのでしょう(そしてそれは次回以降に語られるでしょう)が、ここはやはり「恋人」という設定の方が宜しかったように思えました。…マザコンというのはどうなの?(笑)
 その「休息中の戦士」を使い武装司書に戦いを挑む神溺教団の刺客と、能力を使い撃退しようとする武装司書たち。…いいです(笑) これまではハミュッツの能力はともかく(ノロティの格闘能力ですとかバロリーの先読みなど)割と地味な能力がメインでございましたが、時間を止めたりどこへでもダイブできたりと人外な能力全開でございましたし、それでいながら呆気無く死んだりするところがまたイイ!
 と、作品本来の趣旨からは大きく外れているかもしれない部分で楽しませませていただきましたが、派手なアクションが中心だからと言って内面が描けないなどといったことは無いと思いますので、出来ればこのまま血で血を洗うようなドロドロとしたアクションを前面に出して展開して欲しいものでございます。だってアニメなんだし。
 「生徒会の一存」第1話冒頭で「メディアの違いを理解せよ!」という台詞がございましたが、あれは至言でございますね。本作もいつものように原作を読んでおりませんが、当然今回の戦闘シーンも描かれているでしょうし、文字だけでも迫力十分に活写されていると思います。
 それをアニメにするということは、原作では持ち得ない「動き」「音」「色」という武器(ただし、この武器はしばしば「諸刃の剣」なのですが)を手にする訳ですから、これからもその武器を思いっきり使いこなしていただきたいと思います。