獣の奏者エリン 第45話『かごの鳥』

 当ダイアリーのエントリーで時々「尺が足りない」と書くことがあります。最近のアニメの主流は1クール放送でございますが、その原作はといえばとても1クールで収まりきるものとは見えないものが大半でございます。
 そんな時どうするかといえば「1クールに収まるように内容を端折る」か「1クール分だけ描いて放り出す(運が良ければ次シリーズで続きを描く)」で、これでもとてつもなく腕の良い監督やスタッフに恵まれれば、観ているこちらにそうした不備を咎められることなく円満に終了を迎えることも出来るのでしょうが、実際はそうしたことはなかなか、ね。
 さらに言えば、1クールに収まりそうな分量の原作でも映像化に際しての変換作業で「尺」が足りたり足りなかったりするわけで、現場のスタッフであれば取れるものなら長い「尺」が欲しいだろうと考えてしまいます。
 ですが長くなればなったで別のご苦労もあるだろうことは簡単に思い至ります。ひとつひとつのエピソードを丁寧に描けば「冗長だ」ですとか「散漫!」と罵られ、良かれと思って追加するオリジナルエピソードは「原作に対する冒涜だ!」とか「制作者の自慰行為」だとか・・・、ここまで酷い書き方はしませんでしたが似たようなことを書いたような記憶もありますので私も反省せねば(笑)
 何でこんな事をダラダラと書いたかと申しますと「『エリン こぼれ話――原作者のアニメ監修日誌――』(9)」を読んでキリクがオリジナルキャラクターであることを知ったからでございます。(原作小説は放送終了後の読む予定)
 このキリクというキャラクターは作品の後半で、自身と妹のエピソードで「支配する者」「支配される者」「支配から逃れる者」を繋ぐ重要なキャラでしたからまさかオリジナルキャラクターだったとは意外でございました。
 ここまでのお話でもオリジナルキャラクターやオリジナルストーリーは幾つもあったのでしょうが、どれもこれもエリンの物語には不可欠でしたし、むしろどのエピソードであろうとも(原作にはないからといって)削除できないよね、としか言えません。本作スタッフにとってはこの一年という「尺」であっても足りないという事はあっても余ったということはないようでございます。
 いよいよダミヤによる「理想世界創造」の最終段階でございます。巨大な権力の前で小さな存在でしかないエリンがどう振舞ってくれるのか、残り五話でどのような結末を迎えるのか、不安と期待が交錯しております。