うみものがたり〜あなたがいてくれたコト〜♯012(終)『島の心 人の心』

 12回が長かったようにも感じたし、こうして終わってしまうと短かったようにも感じてしまう不思議なお話でした。
 光も闇も同じように大切で、単純に切り離してしまえるものではない。悲しさを感じる心を失ってしまえば喜びも消えてしまう。人を好きになるということは様々な感情を内包していて、だからこそ素晴らしいものなのだよ、・・・ってことなのかな?
 それとも、争って傷つけあうより抱きしめて慈しみあうことの大切さを見せたかったのでしょうか?・・・観終えた直後に書く感想ですから結論もなにも思い浮かばないや(笑) 視聴者一人一人が自分の心と向かい合って、長い時間をかけて答えを見つけるきっかけになる作品なのかもしれません。作中の夏音のように。
 一つ一つのエピソードをゆっくりと進行するだけの時間があれば、笑いあり涙ありのエピソードを用意して苦しさや悲しさを丁寧に描けただろうと思いますし、そうすることでこちらももっと良く考える事ができたでしょうからそこが残念だったでしょうか。
 一方で、このスタッフであれば「光と闇の対峙」だけに焦点をあて6回くらいのシリーズで手際よくできたような気もいたしますから「饒舌」・・・とは申したくありませんが、やや間延びした印象も否めません。シリーズ全体を通して多くの場面で黒ウリンしか見ることができなかったことも不満(笑) といいますか、そこが個人的には最大のポイントだったんですけれど、ね。
 最終回の白眉は

離れ離れになる「半身」が海と溶け合う様子と、それを「見送る夏音の涙」に重ね合わせたこの場面に尽きますかと。とにかく「見せる」という意味では全く問題のなかった作品で、キャラクターの崩れも(ほとんど)なく、時折見せてくれたアクションシーンもそれ自体はとても素晴らしいものでございました。
 背景美術も変化に乏しい「海」を様々に変化させて飽きの来ないように描いておりましたし、演出意図に応じたレイアウトも同様でございました。短いシリーズだったから「ぼろ」が出なかったのか、それともこのスタッフであればもう少し長いシリーズでも同じ結果だったのか私には分かりませんが(笑)
 数年後、いえ十数年後の「変わった」夏音が再びマリンたちと出会うお話も見たい気持ちもございますが、それは「語る必要のない物語」なんでしょうねぇ。・・・綺麗に終わってはいるが、終わっていない。見事な終わり方じゃありませんか。
 監督の佐藤順一様以下、シリーズ原案の築地俊彦シリーズディレクター紅優、シリーズ構成の山田由香、脚本の横谷昌宏、吉田玲子、そしてキャラデザインの飯塚晴子各位にご苦労に感謝したいと思います。