大正野球娘。 第2話『春の長日を恋ひ暮らし』

「私たちまだ子供じゃないの」「子供時代にちゃんと子供っぽく過ごさないようでは」
 ああ、良い台詞でございました。現状を把握し、それに甘えることなく未来を見据え今を精一杯生きること。更にこの作品のテーマを内に秘め、最小限で表現してみせた見事な台詞だと思いました。宗谷雪役の能登さんの声だと「したたかさ」も含まれているようでさらに良かった(笑)
 戦力になりそうな「巴」「環」他とりあえずメンバー集合。メンバーを集めるまでに時間を掛けるのかと予想しておりましたが、拍子抜けするぐらい順調に集まってしまいました。「スポ根」であればメンバーの紹介やキャラ紹介を兼ねてここに時間を掛けるのは王道なのですが、そういう手段はとりませんでした。これは「スポーツ」そのものを描くことを目的としている訳ではなくて、それを通して少女たちの「輝く時代」を描くことが目的だからなのでしょう。
 あっさりとした描写でありながら、登場人物の性格付けは十分伝わって来ましたからそこは感心いたしました。別段目新しい演出や奇を衒った表現はなく、どちらかといえば「オーソドックス」な表現方法でしたが、それでありながらスルスルと頭に入ってくる手腕は見事でございます。監督は池端隆史さん、ああ、なるほど(笑) 手錬れのベテランですから当然といえば当然ですね。
 演出は手段で目的ではありませんから伝えたい事が伝えられたのならそれで十分。演出や作画に注目してしまい(それはそれで商品価値がありますから、無意味とは思いませんが)内容が伝わらないようでは本末転倒というものでございましょう。気がつかれない位さり気なく、これもプロのお仕事だと思います。
 アンナ先生の指導方法には疑問もある(野球の基本はキャッチボールでしょう、とか)のですが、随所に散りばめられた「笑いどころ」に一々反応させられた時点で野暮なツッコミは無用でございますね。
 ともすれば重い展開(「時代」において女子の役割や男子との格差など)になりそうな題材を使いながら、あくまでも明るくバイタリティ溢れる女の子たちのお話を進行させようとする制作陣の姿勢を支持したいと思います。