夏のあらし! 第8話『勝手にしやがれ』

  • 【パロディー】既成の著名な作品または他人の文体・韻律などの特色を一見してわかるように残したまま、全く違った内容を表現して、風刺・滑稽を感じさせるように作り変えた文学作品。日本の本歌取り狂歌・替え歌などもその例。また、演劇・音楽・美術にも同様のことが見られる。(三省堂発行「大辞林」1988年版 1990頁より)
  • 【オマージュ】尊敬・敬意。賛辞・献辞(三省堂発行「大辞林」1988年版 357頁より)
  • パスティーシュ】音楽・美術・文学で、先行作品の主題やスタイルを模倣・剽窃・混成などの手法によって改変してできた作品。パスティシュ。(「goo」辞書当該箇所より)
  • エピゴーネン】先行する顕著な思想や文学・芸術などの追随をし、まねをしているだけの人。独創性のない模倣者・追随者を軽蔑していう語。亜流。(「goo」辞書当該箇所より)

 今回のエピソードを観ていて「さて、これをどう観たものでしょうか?」と考えて、調べた言葉が上の四つです。作中で使用された元ネタは言わずと知れた大林宣彦監督の出世作にて大傑作の「転校生」(原作は山中亘さんの「おれがあいつであいつがおれで」)でございます。
 最初はいつもの新房監督&シャフトの悪ふざけに見えたのですが、この流れの締め付近ではじめと潤が一本の缶ジュースを飲み交わすくだりで考えが変わりました。
 意識が入れ替わる前ははじめが口をつけた缶ジュースの回し飲みを頑なに拒んでいた潤が、入れ替わっている間にはじめという人間を知ることによって心の垣根が(少し)取れ、同じ状況になった時当たり前のようにはじめから手渡されたジュースを飲みました。
 「転校生」においての主題が「思春期の男女における、近くて遠い意識の交流」だといたしますと本エピソードも当にそれで、これは決してパロディーという範疇のものではございません。良いエピソードでございました。
 一見いたしますとどうにもふざけた作りなのですが、本質は紛う方なき「青春アニメ」だと思うのですが・・・、賛同は得られないでしょうね(笑) ストレートに作るという行為が笑いのネタにしかならない現代ではそれも致し方ないのかもしれませんが、この作り手で「テレ」を取り払った作品をいつか拝見したいものでございます。