蟲師 第23話『錆の鳴く聲』

 とある村で蔓延する奇病の原因を調べるよう依頼されたギンコは、人にも建物や道具にも付着している(「見える」者にしか見えない)「サビ」のような蟲、野錆(やさび)の仕業と判断。そしてその原因は村娘「しげ」の発する「聲(こえ)」にあることを突き止めたのだが、というお話でした。
 この作品にしては珍しく「未知のものに対する村人の恐怖」というものが描かれておりました。人が自分の理解を超えたものに対して「排除」して済まそうと行動してしまうのは、大昔から繰り返される愚行ですが、いざ自分がその立場になったら冷静に行動できるか自信はありません。
 何度も書きますが、この作品で描かれているものは「蟲」という超自然の存在理由ではなく、そうした未知のものに対峙したときの「人」の心だと考えております。描かれている時代は「明治」や「大正」といった時代なのかもしれませんが、「人」の心の在り方はあまり変わっていない、自分が思っているほど強くも冷静に振舞えるわけでもないのだよ、と作者に見透かされていると視聴後考えてしまうのでした。
 今回も「蟲」はきっかけでしかありませんでした。懸命に生きることの難しさと美しさが同居した素敵なエピソードでございました。