夏のあらし! 第7話『他人の関係』

 作中何度も出てきます「横浜大空襲」という言葉は、本作で重要な意味が込められているのかと思いまして調べてみました。死者1万人超という大惨事だったようです。しかし事実として認識はできても現実感は伴いません。2・3年前までの年間交通事故死者数が一日で、同じ町で失われたということですか。でもやはり実感は湧きません。
 こうしたことに現実味を感じないということは幸せなことなのでしょうが、忘れてはいけないことを忘れているというのは不幸なのかもしれないのでは? という思いもどこかにあります。数字でしか認識されない「一万人」という死者の中に本作の主人公である「あらし」と「カヤ」の二人もいたという事の持つ意味が奈辺にあるのか。それはまだ分かりません。
 なんとなく視聴していますと幽霊と少年の明るい青春物語にしか見えませんし(それは意識的にそうしているのかもしれませんが)それで十分なのかもしれないと思いながらも、その奥底に込められた「何か」を感じてしまった以上その正体を見極めなくては、と考えながら視聴しておりますが、このスタッフの作り方では一筋縄では行きそうもありません(笑)
 本編。潤とカヤのお話。「女性の女性らしさ」を嫌悪する潤。けれどどんなに否定しようと「女性」であることは否定できない。そのもどかしさを「絵」と「演出」で見事に表現しておりました。この作品を「新房監督の作品だから」とそれだけで視聴しない人がいたとしますと、それは「大損」していると思いますよ。
 一方のカヤは女性としての慎みを教育されている故に、自分の心を打ち明けられない事に苦しんでおりました。こちらも「絵」と「演出」で(以下略
 二人の抜け出せそうも無い悩みを「一刀両断」したのが主人公「一」の
「思ったらすぐ言う。言いたいことは大声で叫ぶ。悩みも口に出す」
「今言える事を今言わないなんて、それこそ意味ないだろ」
 の台詞でした。「一」は馬鹿でがさつではございますが、物事の本質を直感で言い当てる「いい男」のようです(笑) 複雑に思える悩みも「一」のように「シンプル」に考えることが出来れば世の中も暮しやすくなるのでしょうねぇ・・・。
 劇中「三瓶由布子」さんが「心の旅」を唄っておりましたが、意外(失礼な話ですね)にお上手でございました。まあ役者さんですから「発声」はお手の物でしょうし当然ですね。