鉄腕バーディーDECODE:02 第9話『SPACE,TIME,AND YOU』

 モスの襲撃を受けたナタルは、瀕死の重傷を負い最期を迎える刹那イクシオラ最大の能力「ジャンプ」を発動した、というお話でした。
 当ダイアリーでは何度となく書いてきましたが、私は「復讐もの」が大好きでございます。今シリーズは「復讐者ナタル編」とも呼べる内容で、当然好きな部類・・・なのですが、必ずしも手放しで喜んでいるわけではありません。
 「復讐者には二通りあるクマ」@トッピー・・・とふざけてみましたが、真面目な話そう考えている次第でありまして、「前向きな復讐者」と「後ろ向きな復讐者」と便宜上書きますが、そんな感じです。
 「前向きな復讐者」とは失ったものを取り戻す手段が復讐しかない者を指し、「後ろ向きな復讐者」は復讐それ自体が目的な者を指します。似ているようでそのベクトルは逆方向を指している訳でございます。失ったものはなんでも構いません。愛する人、愛してくれた人、信頼、友情、矜持 etc ・・・。
 ナタルは蔑まれて生きてきて、その場所を追われ、安息の地・地球で出来た親友を失いました。前の2点は諦めていたのかもしれませんが最後の「親友の死」だけは納得できなかったのでしょう。自分の力では如何ともし難い不条理に苦しんだであろうナタルの前に「リュンカ」をこの地に持ち込んだ者たちが現れたのです。これが幸運だったのか不幸だったのかは、今のナタルを見れば自明でございます。
 この時点ではナタルにも他の選択肢があったはずなのです。見て見ぬふりをして平穏だが一生涯「親友」に負い目を感じながら生きるという選択肢が。ですが彼の生い立ちがそれを選ばせなかった。いわれなき迫害を受けひっそりと暮らしてきても結局は悪意に追いつかれてしまうという生い立ちが。
 ナタルは復讐してなにかを取り戻すことはできません。少なくともここまでのお話を拝見している限りは、です。本来復讐とはそういったものかもしれませんがこのまま何も得るもののない復讐でその生涯を閉じる事になるのだとしたら、こんなに悲しい物語はございません。
 こんな風に考えたのは、今回の抑揚を抑えていた声優各氏の演技と、ラストシーンのバーディーとナタルの悲しいキスシーンのせいでございましょう(笑) どこに着地するのか皆目見当もつきませんが、ナタルの魂が救われることを祈りたいと思います。