蟲師 第9話『重い実』

 他の村が天災の見舞われる時、不思議と豊作となる村があった。しかしその年の秋には村の「一番弱い者」の口の中に「瑞歯」が生え、秋の終わりに瑞歯が抜け落ちるとその者は死んでしまう。その陰には祭主だけが知っている蟲にまつわる物語があった…というお話でした。
 蟲は人が積極的にかかわらないで生きて行くのなら何もしない。でもその誘惑に負けて近づけば人は手酷いしっぺ返しを受ける事になる。某作品の等価交換ではありませんが何かを得ると何かを失う、一度目の時祭主はそれを知りませんでしたが二度目は自覚しての行為でした。それは亡き妻への贖罪のためなのか、それともここに生きた祖先や今生きている人々のためだったのか、劇中では明確にされてはおりませんでした。
 土と共に生きる厳しさは昔も今もたいして変わらないものでございましょう、その苦しさから逃れられるのであれば人は簡単にそちら側に逃げてしまう。いえ、どんな生き方をしていても同じでしょうね。私だって…(笑) でも不正手段では逃げられない、何も解決しないと本エピソードは訴えてきます。
 結局人は自分たちの力で生きて生きて行くほかに道はないのですが、その事に気が付いた時には既に手遅れという悲しい事実も又真実でございます。祭主はその身を蟲に預け「永遠」を手に入れて村のために生きて行きます。それが幸せなのか不幸なのかは当人が決める事、少なくとも祭主にとっては幸せなことだと思わせながら物語りは終わりました。
 劇中、祭主の妻が病の身をおして夫に白米を炊き「私の命をあんたが食べてくれるなら、なんだか死ぬのも怖くない」と言い、拒絶したくとも本能が止められず涙ながらに米を食すシーンは、人の哀しさを感じずにはおられなく、いい歳をしたおっさんがもらい涙でございました。…これだからこのアニメは一人で観なくてはならないのですよ(笑)