キャシャーンSins 第3話『苦悩の果てに』

 物語は、始まった以上終わりに向かって止まる事はありません。その「旅」はなにかしらの目的のためですし、大抵の場合その目的は物語を読んだり観ている「こちら側」に早い段階で提示されますが、当作の場合はそうではありません。
 キャシャーンが「月という名の太陽」を殺し、世界は「滅び」に向かっているという情報だけが提示されておりますが、私にはこれがミスリードでない確証はございません。本当にキャシャーンはルナを殺したのか、その事で世界は本当に「滅び」に向かっているのか、何故キャシャーンの記憶は失われてしまったのか、人はどこにいるのか、彼らも滅びに向かっているのか・・・。謎は深まるばかりでございます。
 本作を観ていて不安(不安定)な気持ちになってしまうのは、視聴者である私にもキャシャーンが経験した事、見聞きしたこと以上の情報が与えられていないことにあります。上手い仕掛けだと感心するしかございません。個人的には最後までこのような不毛の旅を見ていたい気持ちもあるのですが、いくらなんでもそれでは「キャシャーン」に酷ですね。
 今回は人間「アコーズ」とのお話でした。「罪」から逃げ回っていた彼も「死」からは逃れられないことを悟り、受け入れて死んで行くお話。アコーズと知り合ったことでキャシャーンは「罪」から逃げ回る事をやめることになるのかどうかは次回を観ないと判断がつきませんが、それでもなにかしらの変化は想像できるお話でした。ひとつひとつのエピソードを重ねながら、キャシャーンも視聴者も世界の謎に近づいて行くことになるのでしょう。
 「罪」を背負って放浪するお話は沢山ございますが、本作の場合「さまよえるオランダ人」パターンなのかなぁと邪推したりもしましたが、本作の場合「キャシャーン」の歩く道そのものにこそ意味を見い出す必要があるのかもしれません。