空飛ぶ幽霊船

「とことん石ノ森章太郎」内で放送。幽霊船が浮かび上がるシーンとか、今観ても良いアングルのカットが随所に見られましたし、39年前に封切られた作品とは思えない作画でございました。まだこの頃の東映動画は全盛期の残り火があったのでしょう。対して物語の方はと言えばB級の悲しさでしょうか、お約束の言葉で言え「尺が足りない」いや、尺が足りないから「B級」なのか。
この頃から「B級」でも観客動員はあったようで、「B級でも売り上げが落ちないのであれば、東映動画の首脳部は無理に大作を作る必要性を認めないようになっていった」みたいな記述を昔なにかの本で読んだ記憶が甦りました。・・・すみません、そういう意味では私も東映動画の長編路線没落に間接的に手を貸したそのうちの一人でした。ただ言い訳させていただければ、あの頃劇場で観るアニメーションはTVで観るそれとは明らかに質が違い、子どもの目で観てもその違いは明白で、色鮮やかでよく動き、大きなスクリーンで観るアニメーションは年に2回の「ご馳走」だったのです。ですから1時間しかなかったこの作品でも大喜びで観た記憶しかありませんでした。
今観ると、よく言えば「無駄の無いスピーディーな展開」ですが、もう無理矢理感満載でした。辻さんの仕事ですが(池田宏さんとの共同脚本)、とにかく1時間で物語を完結させなければなりませんので、エピソードを膨らませるたり、キャラを掘り下げたりする尺など最初から存在しなかったのでしょう。そう思えば最低限のツボだけは押さえている良い仕事です。
この手の単純明快な「勧善懲悪」モノは刹那的に楽しむには充分ですし、その意味では今でも存在理由はあるのでは?とボーっとしながら楽しませて頂きました。