舟を編む 第11話『灯』

「大渡海」完成。
松本先生は亡くなられてしまいましたが、彼の意思は馬締へ受け継がれ、そしてその意志もまた誰かに引き継がれて行く。そう確信させる物語でございました。
もしすべての人があらゆる場面で適切な言葉を使えるようになれば、自分の考えを正しく伝えられる言葉を発することが出来るなら、世の中の争いの大半は消えてなくなるような気がしております。
そのために言葉を集めた辞書は必要不可欠。…もっともその辞書を正しく使えるかどうかは別問題なのですが。
馬締は終わりのない「航海」に出てしまったようですから完成は一時寄港のようなものですが、それを自覚している彼ならば、そしてそんな彼に寄り添ってくれる香具矢や西岡が居てくれるのなら、その旅は孤独などではなく実り多いものになってくれることでしょう。
個人的には時間経過の描写に馬締と香具矢の子供が欲しかったのですが、両者とも一生を打ち込む仕事を持っていると物語として扱いに困ってしまうのかもしれませんね。
物語としてどんなに優れていても映像作品として原作に相応しくない作品はあるでしょうし、この作品も表面的な動きが少ないので派手さとは無縁なのですが、登場人物たちの内に秘められた熱量を伝えることに成功しておりまして、動きがなくても問題のない映像作品に仕上がっておりました。
黒柳トシマサ監督とZEXCSの力量を確認できた事を喜びたいと思います。もちろん三浦しをんさんの原作があってこそでございますので、このお正月にでも原作本を読んでみることにいたします。