蟲師 続章 第二十話『常の樹』

枯木の記憶を宿してしまった男の話。
いつもと同じく記憶を宿して男に寄生した蟲が悪いわけではなく、彼らは彼らなりに生きているだけ。そして男もその記憶のお陰で家族と村人を守ることが出来たのですから結果的に誰も不幸にはなっていないいい話なのですが、何故かモヤモヤいたしました(笑)
誰も不幸にはなっていないと書きましたが、男は満足に歩くことができなくなり、彼の望みである「世間を見る」は挫折してしまったからかもしれません。
でも親子はいつも一緒に居られるようになったのですから…、禍福は糾える縄の如しということかもしれませんね。
と云う事で続章も終了。原作で残ったエピソードはまたも劇場版でという流れでございましたが、スケジュール的に苦しそうなテレビよりもその方が皆幸せになれそうでございます(笑)
ギンコという狂言廻し(時には彼が主役になりますが)が語ってみせたのは、蟲という非日常の存在と触れ合ったことで一変してしまう人の営みでございました。
蟲と関わっても変わらず日常にとどまれる者、もう人の暮らしを送れなくなってしまう者が毎回描かれておりましたが、その違いは異変に際しての対応の違いでございました。
この作品では象徴的に蟲が描かれておりましたが、それは私達が日々の暮らしの中にも訪れてくる突発的な出来事であり、その時どう振る舞うかを問われていたのではないかと考えております。
反発したり拒絶したり受け入れたり。
その時の反応は様々なのでしょうが、「異物」の中身を落ち着いて吟味し冷静に対応する「智慧」を発揮することが最善なのだと語られていたように感じました。
落ち着いた画面を通して心理的に考えさせられる「隙間」を作ってくれた長濱監督以下、僅かな動きを拾い上げることに傾注してくれた馬越さんと作画スタッフ、幽玄な雰囲気を醸し出してくれた美術監督の脇威志さん、その画面を最大限に活かしてくれた増田俊郎さんの音楽、そしてこんな素晴らしい物語を生み出してくれた漆原友紀さん。
全てのスタッフに感謝でございます。