勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。 第12話(終)『勇者になれなかった俺は就職を決意しました。』

新しい魔王となるべく魔界への扉を潜ろうとするフィノ。ラウルたちはそれを阻止すべくフジゼロック山へと向かった、というお話。
ヒロインが注文書で我に返るファンタジーというのも大変珍しい(笑)ですが、実にこの作品らしい幕引きで最後まで楽しませて頂きました。
そして最終回ということもあってか気合の入った作画も見事で、…上手く予算配分したんだなぁ(笑)
「仕事」に向かい合う心構えがシリーズを通してブレることなく中心に置かれていたのが、この作品の特徴であり類似作品との差別化に成功した要因でございましょう、…着眼点の勝利ですね。
誰しも就きたい職業や理想の就職先はございますが、そのためにどんなに努力したとしても才能や諸般の事情で諦めるしか無いことはよくあることでございましょう。
本作の主人公ラウルの場合は努力もしたし才能もあったけれど、制度そのものが消え去って意にそぐわない就職先を選ぶしかなく、故に現状に対して不満を抱える彼の心情は伝わってまいりました。
一方ヒロインのフィノも似たような境遇で、世が世であれば何の苦労もなく次期魔王になれたのに勇者候補のラウルと同じ職場に辿り着いたわけですが、彼女の場合はその境遇を受け入れ前向きに努力する姿勢を見せラウルとの違いと申しますか、コントラストが上手くついておりました。
彼女は数多くの失敗を繰り返しましたが、それは全て努力の過程での失敗であり誰もそれを責めることは出来ないものでございまして、むしろラウルにとってフィノの失敗一つ一つが己の仕事に対する「責任」を突き付けていたのでございます。
彼女のように真剣に仕事をしているのか、逃げ場ばかり探していないか。状況や世間にばかり不満をぶつけて手に入れた仕事を疎かにしてはいないか。
仕事の本質を問いながら、魔王を倒すことだけが勇者の仕事ではないとラウルに気づかせる処まで繋げた構成は見事でございました。
画としてはヨシモト監督らしいお色気描写過多(笑)でございましたが、ともすれば地味な内容をエンタメとして成立させた作者と、それらを上手く見せてくれたスタッフに感謝でございます。