中二病でも恋がしたい! Last Episode『終天の契約(エターナル・エンゲージ)』

視聴後暫し言葉を失う、…素敵な作品をありがとうと感謝の言葉だけが浮かんでまいりました。
最終回
過去の勇太からの手紙はもっと早い段階でその存在を明らかにしておいた方が良かったかもしれませんし、くみん先輩が六花のために「中二病」のふりを決意するエピソードですとか、凸守が憑き物を落とすまでの心の葛藤も個別のエピソードで観たかったとは思いましたが、浜辺で二人が遂に「不可視境界線」を発見した場面で全てがどうでもよくなりました(笑)

(私にとって本作のベストカット)
12回でこれだけ丁寧にまとめられたのも、制作陣のコントロールが効いていたからでしょうね。…おっさんの中で京アニへの評価は天井知らずでございます(笑)
作品への評価はそれだけで十分でございまして、つらつらと書き残すことでこの感動を台無しにしてしまいそうな気がするのですが、…まあ書いちゃうんですけどね(笑)
救済の物語
タイトルに「中二病」と冠し、作中の登場人物たちはその患者さんでございましたが、この作品で描かれていたものは多くの視聴者も気付いていた通りそれだけではございません。
と申しますかここで描かれていた「中二病」はアイコンに過ぎません。誰もが求める心の平穏の拠り所の象徴を本作では「中二病」として描いていただけでございます。
ある者は宗教に、またある者は権力にそれを求めていることでしょう。そこまで大事でなくてもスポーツをしたり音楽を聴いたり描いたり絵画を見たり描いたり、創造的なものでなくとも路傍の草花や雲の流れ星の瞬き、すぐ傍にいるペットの温かさ。いや枚挙にいとまがございません。
他者にしてみればとるに足らないものであっても当人はそれだけで救われるものは誰にでもあるでしょう。…救いの形は人それぞれなのでございます。
中二病」はこういう言葉がなかった頃から誰しもが一度は罹った病ではないでしょうか。
肥大化した自意識などといった難しい解釈をしなくとも、成長の過程で思う通りにならない局面に対峙した時、親や友人に頼れない年頃は自分で空想の世界という安全地帯を作り上げ、そこで一時避難したとしても責められるものはございません。…逃げ込んだまま帰ってこないのはダメかもしれませんが(笑)
「一時避難」と書きましたが、上で書いた通り、その場所が当人にとって「救い」になるのでしたら永遠に「患って」いたとしても問題はないでしょう、…他者に迷惑をかけない限りはですが。
繰り返しますが「救い」の形はひとりひとり違う「個人的な」ものでございますからね。
六花と勇太の物語
六花の場合、父親の死を受け入れられず、心に空いた穴を埋めるこ為に必要だったのがたまたま出会った勇太の「中二病」に過ぎなかったのでございますが、試してみると楽しかったのでしょう(笑)、以後その道を邁進して行ったようでございます。
ただ六花の本当の救いは「中二病」そのものではなくそれを患っていた勇太、いえその時点では気が付いていなかったけれど勇太そのものだったのかもしれません。
何故勇太だったのかという問題の解釈は様々ございましょうが、おっさんは「中二病の六花をそのまま受け入れてくれたから」ではなかろうかと。
勇太は生温かい目でみていただけかもしれませんが、さすが罹患者(笑)は他の人とは違い疎外したり拒絶したりはいたしませんでした。母や姉、それに祖父母からも理解されず、それでも必死になって「良い子」を演じながらも心細い思いをしていた六花にとって、「変人」の自分を受け入れてくれた勇太の反応はまさに救い、救世主(いやな救世主だなぁw)だったのでしょう。
そりゃあ惚れるよね(笑)
分かってくれなくても構わない、でも受け入れて欲しい。物語はそこから始まるのでしょうから。
六花は勇太と共に父親がいる「不可視境界線」を超えることができました。と同時に勇太にとってもそのことが「救い」になったかと。「演じた」キャラも勇太の「ありのまま」であり、そんな自分と一緒に立ってくれる六花を得ることができたのですから。
二人はもう一度今までのような「中二病」に戻るかと云えば多分そんな事はないでしょう。これからは「逃げ場」としての「中二病」ではなく、「人とは違う目線でこの世界の美しさを見る、見つける」手段としての「中二病」へステップアップ(!)するような気が致します。
最後に
「表現力」の重要さはそれを見せられた時気付くのかも知れませんが、まあ京アニにとってはこれが常態でございますので今更ですね(笑) ただこの「当たり前」が永遠に続くとも考え難いですし、私たちは貴重な体験をしていることを知っておく必要もあろうかと存じます。
演出に関しましてはド素人でございますのでアレコレ書くことは出来ませんが、そんな素人でもキャラの心情が一枚の画や僅かな動きですんなり入ってくるのは演出の方々がいい仕事をしてくれたからと云う事だけは理解できます。
物語の選択、アニメーションの仕上がり。素晴らしい作品をありがとうございました。