氷菓 #17『クドリャフカの順番』

カンヤ祭と同時に十文字事件も終了。
「絶望から期待が生まれる」
やはり先週里志が見せた表情もこのエピソードでは重要な要素だったようでございます。
里志が奉太郎に抱く感情、田名辺治朗が陸山に抱く感情、河内亜也子が安城春菜に抱く感情。自分が欲してやまない才能、しかし決して手に入れられない才能を持ちながら、その「価値」を全く一顧だにしない無神経さ。
殺意が湧いても問題ないレベルでございます(笑)
そうした才能の差を殺意に転化しない場合、人が取りうる最善の策は「期待」という形で自分の精神のバランスを取ることなのでしょう。
里志は奉太郎に自分では見ることのできないものを見てもらいたいと願い、河内はその才能を決して見ない事で、田名辺はもう一度見たいと遠回りの催促をする、と三者三様の反応でございましたが根は一緒でございました。
摩耶花のそれは「嫉妬」とはちょっと違う感情だったでしょうか、嫉妬という感情も湧きあがらないほどの才能の違いを彼女自身が認めていたのですから。彼女の場合純粋な憧れであり、だからこそ暗黒面(笑)には堕ちていなかったのかもしれません。
誰もが心の中で傷を負っている。
里志の「憧れる」奉太郎にしても「愚者のエンドロール」では入須によって「傷」を追わされていた訳でございまして、青春期に無傷でいられる者などいないという事なんでしょうね。この傷を抱えて彼らは成長して行くのだと作者は語りたかったのかもしれません。
で、各所で死屍累々(笑)の中、ひとり「える」だけは軽やかに駆け抜けておりました(笑)
あの入須をして手なずける事を諦め、本人も「これは私じゃない」と確固たる意識を持つえるの振る舞いが、この哀しいエピソードの救いでございました。…天然は強いなぁ(笑)
それと今回校了原稿が燃えた(爆発した)シーンの摩耶花の動き(驚いて腰砕けになった作画)が最高(笑)だったことを書き記しておきます。…いや他の場面(特に駐輪場で奉太郎と田名辺のシーン)も見事だったのですが、インパクトでは摩耶花の動きが一番だったなぁ、と。