ベン・トー  #12(終)『国産うなぎ弁当 790kcal』

土用の丑の日の決戦」完全決着!
人が生きて行く上で「食べる事」は最重要なことでございますが、しかし「矜持」を持たなければそれはただ「生きている」だけである。そんな生き方は本当に「生きている」と云えるのだろうか?
定額の弁当を買えよ!と人は言うが、それでは腹を満たす事は出来ても「勝ち取った」満足感を得ることは出来ず心が満たされる事は無い。そう、昔から生き物は「戦って」喰らうことで腹も矜持も同時に満たしてきたのだから!
目の前に「食べて下さい、このままでは廃棄されてしまいます」と慈悲を乞う食べ物がある。同じようにそれを狙う「狼」が多数いる。ならば戦うしかないのだ!己の全てを賭けて!!
…といった内容を作者が真面目に考えていたとは思いませんが(笑)、かといって全てが冗談だった訳でもなく、そのバランスが絶妙だった「怪作」でございました。
「半額弁当を争う物語」といったたった一つのアイデアを転がしただけの潔さがイイ!
この作品の場合描いていたのは「狼」でございまして、極論すれば「氷結の魔女」や「変態」が登場しなくとも物語は成立すると考えます。佐藤たちがいる町の、あのスーパーでなくとも「狼」がいればそこに違う物語は存在していたと。
こういう作品構造の場合、キャラは魅力的である必要はあっても絶対無二である必要はない訳でございまして、キャラの内面を掘り下げるといった通常の「作り方」はあまり意味がないのかもしれませんから。
キャラが「駒」として存在するだけで十分なほど物語の土台がしっかりとしていたのだと思いましたよ。
ただ、構成としてひとつ疑問だったのは「白梅梅」と「あせび」の扱いでございまして、これといって見せ場も用意してあげられなかったのはどうだったのかと。「あせび」はともかくこれでは「白梅梅」はただの「暴力女」としてしか記憶に残らないじゃありませんか!
まあ原作との兼ね合いがあって自由に扱えなかったのかもしれませんが、そこだけが残念でございました。
アクションにこだわりのある監督の板垣さんは最近不遇(笑)でございましたが、ようやく代表作のひとつが出来たと思います。
アクションもさることながら、エロに対してもストレートな表現を回避し(見事なくらい「パンツ」を見せませんでしたからねぇw)、「ギリギリ」「際どい」「パーツのアップ」でフェチとしての面目を保ってくださいました(笑)
画(「弁当作監」は全編を通して良い仕事でございました)も動きもレイアウトも、そして劇伴も楽しいアニメでございました。スタッフの皆さま、ご苦労様でした!