フラクタル EPISODE 05『旅路』

有耶無耶のうちにグラニッツ一家とダナンに乗って僧院の追手から逃げることになってしまったクレインは、スンダから「船に乗っていたければ働け」と言われ慣れない肉体労働をすることに。クレインが悪戦苦闘しているとダナンが不調になりその原因はネッサであった、というお話。
私はこのお話を観ていて「ラピュタ」の「タイガーモス号」に乗り込んだパズーとシータが修理や掃除・洗濯・食事の用意とバリバリと働くシーンを思い浮かべました。
ラピュタ」では多分5分くらいの尺しか取っていなかったと思いますが、たったあれだけの時間で主人公二人がドーラ家族と一気に距離を縮めてしまい、それを観客に納得させてしまった秀逸なシークエンスだった訳ですが、「劇場版」という時間の制約がなければもっと色々な見せ方をしただろうなと考えております。
テレビシリーズのいい処は、そうした時間の制約が比較的緩いところにあると考えておりまして、であればこのエピソードはもう少し丁寧に作っても良かったように見えました。
Aパート始めの食事シーンと、Bパート終わりごろの食事シーンはクレイン・フリュネとグラニッツ一家の距離を表していた訳ですが、その「道中」にあったエピソードに男ども(女性たちは二人に対して終始友好的でしたので特段問題は…、いや、こちらも友好的な理由の描写はなかったか…)が二人に対して心を許すような魅力的な「事件」が存在していなかったのが残念でございましたでしょうか。
価値観が決定的に違うふたつの勢力が融合するには些か能天気過ぎたかもしれません。
とは申しましても今回も見所はございまして、とにかくキャラのコロコロと変わる表情ですとか、「行動」の細部まで丁寧に描かれているところですとか、一見無駄に見えるところにまで気を配っている作画には感心させられました。
今回の「絵コンテ・演出・原画」は吉岡忍さんで、お名前を存じ上げませんでしたのでググってみたところ元京都アニメーションのアニメーターだった方のようでした。…監督とは知り合いってことですよね?
以前どこかのサイトで山本監督の「作画オタなんていない。ヌルヌル動かしたところで労力に見合うほどの意味はない」といったような意味の記事を読んだような記憶があるのですが(うろ覚えですので間違いかもしれませんが)、やはり何気ない仕草や表情がキチンと描かれているものを観るのは楽しいですし、そうしたものは作画オタでなくとも伝わるものはあると、今回の「絵」を観ておりまして実感いたしました。
「絵」としては満足できる作品でございますが、それ以外の部分も丁寧に作っていただきたいかなぁ…、もっとも「尺」が絶対量足りないのかもしれませんが。