鋼の錬金術師 第53話『復讐の炎』

怒りのため、いつもより強めに燃やしております。
という事で、念願だったヒューズの仇であるエンヴィーと対峙するマスタングは怒りに我を忘れてしまいます。
マスタングの「内に潜んでいる煮えたぎるような怒り」が徐々に高まり一気に放出される場面は、演出や作画の助けがあり実に見事でございましたが、助けがなくとも本作をここまで観て来た視聴者にとりまして最高のカタルシス・・・、のはずなんですがねぇ。
エンヴィーがこれまでしてきた事を思い出せば、マスタングがどんな手段を使っても正当化できると思うのですが、作者はそう考えてはいないようです。
絶対の力や死なない体を持って自信満々であったエンヴィーがズタボロになりながら逃げ惑います。何度再生しても殺しに来る存在に怯える(ように見えました)エンヴィーを哀れに感じた方もいらっしゃったのでは?
ここに作者のある意図があるのではないでしょうか。
いかに悪逆非道の限りを尽くした相手とはいえ、そして倒さなければ「前」に進めないとはいえ、何度も「殺して」いいのか?それは彼自身が憎んでいるだろう「暴力」(直接的なものだけではなく、政治的なものやその他諸々を含めて)そのものではないのか。
極限において人はどう身を処すべきなのか。悲しみを埋めるために暴力は解決になるのか。
本作は暴力の描写は多いですし死も頻繁に描かれてはおりますが、それは作劇的に盛りあがるですとか、ただ描きたかったからではないという事を今回のこのエピソードから見てとれるような気がいたします。・・・気がするだけですが(笑)
マスタング大佐には個人的な恨みに走る姿より、大局を見渡す姿の方が相応しいですし、ね。来週はいつもの大佐に戻っていただきたいものでございます。